【ベトナムM&A実務】クロージング後の「法的完結」に向けた必須プロセスとガバナンス
  
Topic : M&A
Country : Vietnam

こんにちは、ベトナム、ハノイ支部の小瀬です。

20262月現在、ベトナムにおけるクロスボーダーM&Aは高度化の一途を辿っておりますが、多くの案件において、クロージング(資金決済)直後の法的手続きに空白期間が生じるケースが散見されます。

実務上、資金決済の完了は商業的な区切りに過ぎず、法的な権利移転の完了(Perfection)を意味するものではありません。

本稿では、M&Aプロセスの最終工程である「⑨ クロージング後のライセンス修正・登録手続き」について、ガバナンスの観点から速やかに履行すべき4つの重要事項を解説いたします。

これらは単なる事務手続きではなく、買収後の事業継続性を担保するための法的要件となります。PMI(統合プロセス)の初期段階において、確実な遂行が求められます。


M&Aを法的に完結させるための4つの必須要件

資金決済後、以下の行政手続きを経て初めて、貴社は法的に正当な権利者としての地位を確立し、第三者対抗要件を具備することになります。

1. キャピタルゲイン税の申告・納付(「10日ルール」の遵守)

税務コンプライアンス上、最も緊急性が高い手続きです。原則として、売り手が譲渡代金を受領した日から10日以内に納税義務が発生します。

  • 実務上の留意点: 非居住者である海外の売り手が、ベトナム国内で納税手続きを行うことは実務上困難です。そのため、「買い手が譲渡代金から税額相当分を源泉徴収(Withholding)し、売り手に代わって代理申告・納付する」スキームを採用することが一般的です。SPA(株式譲渡契約)における合意に基づき、遅滞なく処理する必要があります。

2. 企業登録証明書(ERC)の修正

ベトナム会社法において、株主変更の効力が第三者に対して発生するのは、資金決済日ではなく「計画投資局にてERCの書き換えが完了した時点」となります。

  • 手続き概要: 法的代表者や株主名簿の変更登記を行います。
  • リスク管理: 本手続きが完了するまでの間、法的には旧株主が権利者として扱われる不安定な状態が続きます。経営権の空白期間を最小化するため、迅速な申請が不可欠です。

3. 投資登録証明書(IRC)の修正

対象企業が外資系企業(FDI)として登録されている場合、ERCに加え、IRC(投資登録証明書)の修正も必須となります。

  • 確認事項: 外資規制に関する条件変更が含まれる場合、当局の審査を要することがあります。ERC修正と並行し、計画的に手続きを進める必要があります。

4. ビジネスライセンス(サブライセンス)の更新

2026年現在、当局によるライセンス管理は厳格化されており、特に規制業種における親会社変更の手続きは重要度を増しています。

  • 対象業種: 流通(小売)、教育、医療、不動産開発など。
  • コンプライアンス要件: 親会社の変更に伴い、所管省庁への報告やライセンスの書き換えが義務付けられています。これを怠った場合、コンプライアンス違反として事業停止命令等の行政処分を受けるリスクがあります。PMIプロセスにおける最優先事項として位置づけるべきです。

M&Aの成功は、契約締結やクロージングそのものではなく、これらの行政手続きを完遂し、安定した事業運営体制を確立した先にあります。

特にサブライセンスの更新は、買収後の事業価値維持に直結する重要事項です。現地の専門家と連携しつつ、経営陣が完了までモニタリングを行うことを強く推奨いたします。

弊社では、クロージング後のPMIおよびライセンス関連実務についても、2026年の最新法令に基づいた専門的なサポートを提供しております。

詳細な手続きについては、お気軽にご照会ください。

Creater : 悠也 ⼩瀬