インド企業省(MCA)は2025年7月14日より、「Form CRL-1」の改定版を施行します。これは、企業の子会社構造に関する透明性と規制の強化を目的とするもので、「Companies (Restriction on Number of Layers) Rules, 2017」に基づき、企業に対し子会社の層構造の詳細な開示を義務づける新制度です。インドでの事業展開や組織再編を予定している企業は、制度の主旨と実務的な対応を理解することが不可欠です。
1. Form CRL-1とは?
Form CRL-1は、企業がLLP(Limited Liability Partnership:有限責任事業体)への転換や組織再編を行う際に、企業省に提出する法定申請書類です。これまでは形式的な情報報告が中心でしたが、今回の改定により、子会社構造の階層ごとの詳細開示が求められるようになりました。
2. 新たな規制の要点:2層までの制限と例外
インド国内企業は、原則として2層を超える子会社構造の保有が禁止されます。目的は、不透明な企業構造や脱税スキームの抑止、受益者不明な所有構造の排除です。
ただし、以下のような例外があります:
- 完全子会社(WOS)は1層分としてカウント除外。
- 外国子会社は、現地法に準拠していれば2層を超えて保有可能。
- 銀行・重要NBFC・保険会社・政府系企業には規制が適用されません。
3. 改定Form CRL-1の主な変更点と開示義務
改定後のCRL-1では、以下の項目の詳細な提出が義務化されます:
- すべての子会社の階層別構造(Layer-wise)
- 各子会社とその親会社の名称・CIN(法人識別番号)
- 出資比率、登記住所、公式メールアドレス
- 子会社ネットワークの登録情報と株式構成
従来の報告では、階層の合計数や会社数のみが必要でしたが、今回の変更により、透明性が格段に向上します。
4. 実務上の影響と企業の対応策
今回の改定は、企業のレピュテーションと投資家・監督当局との信頼構築に寄与する一方、以下のような実務負担が増加します:
- 子会社情報のリアルタイム更新体制の整備
- 組織変更に応じた構造変化のモニタリング
- 30日以内のCRL-1提出と年間定期報告の義務化
- 電子署名(DSC)を用いたMCA21ポータル経由の電子申請
これらを怠った場合、初回罰金INR10,000(約117ドル)+1日ごとINR1,000(約11.7ドル)の追徴金が科される可能性があります。
5. インド進出企業への示唆
インドで事業を行う日系企業・外資系企業は、以下の対応を速やかに講じる必要があります:
- 自社グループの子会社階層構造の棚卸し
- 規制適用除外の可否確認(WOS・海外子会社など)
- 法務・会計部門と連携し、構造変更のリスク評価
- Form CRL-1の提出責任者(取締役)のDSC登録と電子申請手続きの準備
特に複雑なグループ構造や、M&A・事業再編を計画している企業は、今回の改定が戦略や資本構成に影響を与える可能性があるため、事前の対応が極めて重要です。
Form CRL-1の改定と階層制限ルールの強化は、インド政府が透明性とコンプライアンスを重視する姿勢を明確に示すものです。進出企業にとっては単なる申請書類の変更ではなく、コーポレートガバナンス水準そのものが問われる改革と言えるでしょう。
規制に対する適切な対応は、長期的な市場信頼の獲得、法的リスクの低減、持続可能な事業運営の実現に直結します。専門家と連携し、制度への的確な理解と体制構築を早急に進めることが求められます。
本日は以上になります。
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