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本日は、日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)の大筋合意について解説します。
- 概要
日本の外務省は2025年12月22日、茂木敏充外務大臣が、バングラデシュ暫定政権のシェイク・バシール・ウッディン商業顧問(Adviser)と電話会談を行い、日・バングラデシュEPAについて大筋合意に達したことを確認したと発表しました。
本EPAは、バングラデシュ側でも「包括的な通商枠組み」として注目されており、バングラデシュにとっては初の本格的なEPAと位置付けられています。
また、日本・バングラデシュ両政府は2024年3月12日に交渉開始を発表しており、今回の大筋合意はその交渉の到達点となります。
当協定の意義としては、日本から輸出する鉄鋼製品やバングラデシュから輸出する縫製・アパレル製品に対して関税を撤廃することで、市場へのアクセスをより自由にすること。投資、電子商取引、政府調達、知的財産、国有企業、補助金、競争、労働を含む幅広い分野でルールを整備することが挙げられます。
日本はバングラデシュに対して輸出入総額やFDI投資で他国に遅れを取っているものの、ODAでバングラデシュ最大の出資国になっています。また日本にとってもバングラデシュは、後発開発途上国(LDC)との最初の二国間EPAです。
- 大筋合意のポイント
今回の大筋合意では、日本からバングラデシュへの市場アクセスに関し、高関税が課されている鉄鋼、自動車部品、織物、電子部品などの鉱工業品を含む 1,039品目について、即時から最長18年以内で段階的に関税撤廃が行われる見込みです。また、乗用車(完成車)については、日本が将来にわたり他国に劣後しない特恵待遇を受ける枠組みになるとされています。
農林水産品・食品についても、バングラデシュ市場で需要拡大が期待される品目を中心に関税撤廃が盛り込まれており、例えば ぶり・たい・ホタテ等(28%)は15年、りんご・ぶどう等の青果(最大88.5%)は15~18年、緑茶(53.6%)や味噌・醤油(53.6%)は15年、さらに 和牛肉(40.8%)は「和牛」に限定して15年での関税撤廃を獲得した旨が公表されています。
一方、バングラデシュから日本への市場アクセスについては、繊維・衣料品をはじめ多くの品目で即時または段階的な関税撤廃が想定される一方、日本側のセンシティブ品目は配慮され、米・麦、乳製品、牛肉、豚肉、砂糖・でん粉等を含む重要品目は関税削減・撤廃の対象から除外される整理となっています。また、日本の農林水産品輸入の大きな割合を占める えび・かに、紅茶、香辛料等については、関税撤廃により無税を維持する設計とされています。
加えて、大筋合意には、物品関税に加え ルール面の整備も含まれるとされ、例えば 政府調達(市場アクセスの相互約束)、電子商取引(ソースコードの移転・アクセス要求の禁止等)、透明性/税関手続・貿易円滑化(汚職・腐敗防止に係る規律を含む)、さらに 労働、国有企業等の分野で、幅広い規律を整備する方向で合意した旨が報じられています。なお、最終的な条文・関税譲許表の詳細は、今後公表される協定本文等で確認する必要があります。
今回は「日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)の大筋合意」について解説しました。
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※本記事は、バングラデシュに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。