会計業務責任の明確化と国家統一会計制度の徹底実施に関する最新指針
  
Topic : Accounting
Country : China

中国当局は2025年12月19日、企業の財務透明性の向上と不正防止を目的として、「会計業務責任の一層の明確化および会計関連法令ならびに国家統一会計制度の徹底実施を強化することに関する意見」を公開しました。本指針は、企業における会計実務の法的責任を再定義し、国家が定める統一基準の厳格な遵守を求めるものです。


1. 会計責任の所在明確化と制度の徹底
今回の指針の核心は、会計業務における責任の所在を組織内でより具体的に特定することにあります。
• 責任の重層化:会計実務担当者のみならず、管理職や経営トップに対しても、会計データの正確性と法令遵守に関する指導・監督責任がこれまで以上に問われることになります。
• 国家統一会計制度の遵守:中国独自の「国家統一会計制度」に基づいた正確な処理が強く求められており、各企業は自社の会計実務がこの基準から逸脱していないか、厳格な自己点検を行うことが義務付けられています。


2. ビジネスへの影響と注目すべき動向
• 財務ガバナンスの強化:当局による監督が「結果」だけでなく「プロセス」や「責任体制」にまで及ぶようになります。これにより、不正会計や不適切な経理処理に対する抑止力が高まることが期待されます。
• 税務コンプライアンスとの連動:同時期に発表された「滞納税公告弁法」などの徴収管理策と並行して、適切な会計処理が行われているかどうかが、税務上の優遇措置や還付(留抵退税)を受ける際の評価にも影響する可能性が高まっています。
• 不正・贈収賄リスクの低減:会計責任を明確化することは、企業の内部統制を強化し、商業賄賂や不正行為を未然に防ぐインフラとなります。


3. 企業が取るべき対応
日系企業の中国拠点においては、以下の対応が推奨されます。
• 内部管理規則の再整備:最新の「意見」に沿って、自社の会計マニュアルや職務分掌を見直し、各レベルにおける責任範囲を明文化すること。
• 国家基準への完全準拠の確認:独自の会計処理や曖昧な運用がないか、国家統一会計制度に照らして社内監査を実施すること。必要に応じて、専門家による動画研修コンテンツ等を活用した従業員教育を行うことも有効です。
• 最新法令の継続的なモニタリング:中国の法規制は頻繁にアップデートされるため、「新法令速報」などを活用して、常に最新の執行基準を把握しておく必要があります。


まとめ
今回の指針は、中国政府が推進する「経済の質の高い発展」を実現するため、企業経営の土台となる会計実務を健全化させる強力なメッセージです。企業側は、単なる事務手続きとしての会計ではなく、法的リスク管理としての財務ガバナンスを再構築し、透明性の高い経営体制を整えることが、持続的なビジネス展開の鍵となります。

Creater : Kobayashi Yusuke