日本・バングラデシュEPA
  
Topic : Economic
Country : Bangladesh

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本日は、「日本・バングラデシュEPA」についてです。

 

1. 概要

2026年2月6日、日本とバングラデシュ両政府は経済連携協定(EPA)に署名しました。本協定はバングラデシュにとって史上初の二国間EPAであり、日本にとっても後発開発途上国(LDC)との初めてのEPAとなります。現在バングラデシュに進出している日系企業にとって、関税削減によるコスト競争力の向上、投資環境の透明化、サービス分野の開放など、ビジネス環境の飛躍的な改善が期待されます。

 

2. 貿易面の影響

EPAの最も直接的な効果は貿易面特に関税コストの削減です。

 

日本→バングラデシュ(輸出)

現状の課題:バングラデシュは国内産業保護のため、日本からの工業製品に15〜25%の高関税を課しています。例えば、日本から1億円の機械部品を輸入する場合、現行では1,500万〜2,500万円の関税負担が発生します。これが現地製造業の原価を押し上げ、競争力を削いでいました。

 

EPAによる変化:関税撤廃率は輸入額ベースで約83%に達します。特に製造業に関連する品目での効果が大きく、以下のスケジュールで段階的に削減されます。

 

【主要品目の関税撤廃スケジュール】

品目

現行税率

撤廃期間

実務的インパクト

機械類

5〜25%

約8割の品目で即時撤廃

製造設備投資コストが即座に低減。新規工場設立や設備更新の意思決定が加速

電子部品

10〜25%

5〜18年

スマホ組立、家電製造等でのコスト競争力向上

鉄鋼製品

15〜25%

12〜18年

建設・インフラプロジェクトでの日本製鋼材の価格競争力向上

自動車部品

15〜30%

10~15年

現地組立の競争力強化。ただし段階的削減により現地部品産業への配慮も

 

バングラデシュ→日本(輸入)

現状:バングラデシュの対日輸出は年間約2,200億円で、その84%を繊維製品が占めます。現在はLDC特恵で無税ですが、2026年11月のLDC卒業後は最大10〜15%の関税が復活する見込みでした。これは現地縫製工場の受注減、ひいては日系アパレル企業のサプライチェーン寸断につながる重大なリスクでした。

 

EPAによる変化:
- 繊維製品の無税措置を恒久的に維持:LDC卒業後も関税ゼロが継続されます
- 原産地規則の大幅緩和:これまでの厳格な「2工程ルール(糸→布→製品すべてを域内で加工)」から、柔軟な「1工程ルール(裁断・縫製等の加工で原産性を認定)」や「関税分類変更基準(CC)」が導入されました

実務的意味:例えば、中国製の生地をバングラデシュに輸入し、現地で裁断・縫製した製品を日本に輸出する場合、従来は原産性が認められず日本での関税対象でしたが、EPA発効後は「バングラデシュ原産」として無税輸入が可能になります。これにより、調達先の選択肢が広がり、コストと品質のバランスを最適化できます。

進出企業への影響:バングラデシュで縫製拠点を持つ日系企業にとって、LDC卒業後も安定した無税アクセスが保証されることで、長期的な投資計画が立てやすくなります。「バングラデシュ拠点の撤退」という最悪シナリオが回避されました。

 

3. サービス・投資分野の開放とルール形成

サービス分野の大幅開放

日本企業が出資可能なサービス分野が、これまでのWTO協定レベルの16分野から約100分野(約6倍)へと大幅に拡大されました。

  • 物流、エンジニアリング、ITサービス、金融、建設、流通など、幅広い分野での外資規制緩和が含まれます。

デジタル経済・投資環境のルール整備

ビジネスの透明性を高め、予見可能性を確保するための高度なルールが導入されます。

  • デジタル経済:国境を越えるデータの自由な流通の確保、サーバーの現地設置要求の禁止、ソースコードの開示要求の禁止(企業の知的財産保護)。
  • 通関円滑化:「48時間以内の許可」を努力目標として設定。書類の簡素化や手続きの透明化を推進。
  • 投資環境:政府調達プロセスの透明性向上、許認可手続きの明確化、汚職・腐敗防止に向けた規律の強化。
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4. 企業が取るべきアクション

□ 短期(EPA発効前:〜発効まで)

  • 自社取扱品目のHSコード(関税分類)の再確認と、協定税率を用いた関税削減効果の試算
  • 原産地証明書(CO)の発給申請に向けた社内体制の準備
  • 既存のサプライチェーン(特に中国・タイ等を経由するルート)の見直し検討
  • 貿易実務担当者向けのEPA活用研修の実施

□ 中期(EPA発効後:1〜2年)

  • EPA特恵関税の実際の活用開始(原産地証明書の取得・提示)
  • コスト削減効果の検証と、それに基づいた価格戦略・ビジネス拡大の判断
  • サービス分野(100分野)の開放を活用した新規事業・拠点設立の検討
  • 新規投資や設備増強の検討

□ 長期(EPA発効後:3年以降)

  • 段階的な関税削減スケジュールを見据えた中長期事業計画の策定
  • バングラデシュを「製造・輸出のハブ」と位置付けたグローバルサプライチェーンの再構築
  • 現地パートナー企業との連携強化

 

5. 原産地規則の実務ポイント

EPA税率の適用を受けるためには、産品が「原産品」であることを証明する必要があります。

3つの主な原産性判定基準

  1. 完全生産品(WO):農水産物など、バングラデシュまたは日本国内で完全に生産されたもの。
  2. 関税分類変更基準(CTC):第三国(非原産)の材料を使用していても、加工によりHSコード(関税分類)が所定のレベルで変更されていれば原産品とみなす。
  3. 付加価値基準(QVC):産品の価格に占める域内(日・バ)付加価値額が一定割合(通常40%など)以上であれば原産品とみなす。

主要品目のPSR(品目別規則)例

  • 繊維・アパレル:「1工程ルール」等の採用により、生地を輸入して縫製した場合でも原産性が認められやすくなります。
  • 機械・電子部品:主にCTC基準(4桁変更など)またはQVC(40%以上)の選択制が採用されています。

証明制度(自己証明・第三者証明)

原産地証明の手法として、以下の3タイプから選択可能です。

  1. 第三者証明制度(日本商工会議所等による発給)
  2. 認定輸出者による自己証明制度
  3. 輸出者・生産者による自己申告(一定額以下の貨物等)

6. 今後のタイムライン

時期

イベント

企業対応

2026年2月

日・バングラデシュEPA署名完了

情報収集・社内検討開始

2026年中

両国での国内批准手続き(国会承認等)

原産地証明取得の準備

2026年後半〜
2027年

EPA発効(見込み)

特恵関税の活用開始

2026年11月

バングラデシュ LDC(後発開発途上国)卒業

繊維製品等の無税継続を確認

2027年以降

段階的な関税削減の進行

中長期計画への反映

 

7. 進出企業への影響度(業種別概要)

  • 影響度:大
    • 繊維・アパレル:LDC卒業後も無税アクセスが維持されるため、最大の恩恵を受けます。
    • 機械・部品製造:部材輸入関税の即時撤廃(約80%)により、製造コストが直ちに低減します。
    • 商社・流通:手続きの簡素化と関税削減により、貿易取引が活性化します。
    • IT・サービス:出資規制緩和(100分野)により、進出の自由度が劇的に向上します。

 

  • 影響度:中
    • 建設・インフラ:政府調達の透明性向上により、入札機会の公正化が期待されます。
    • 化学・素材:段階的な関税削減により、中長期的なコストメリットが発生します。

 

 

 今回は「日本・バングラデシュEPA」について解説しました。

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※本記事は、バングラデシュに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。

Creater : 塚田 涼太