インド会計基準AS22改正(OECDピラー2モデル対応) と多国籍企業への影響
  
Topic : Accounting
Country : India

概要

2026年3月10日、インド企業省(MCA)は官報通知 G.S.R.169(E) により「会社(会計基準)改正規則2026」を公布し、所得税会計基準 AS22 を改正しました。今回の改正は、多国籍企業向けに制定された国際最低税率ルール「OECDピラー2モデル」に対応するための調整であり、ピラー2課税(Qualified Domestic Minimum Top‑Up Tax 等)をAS22の適用対象と明確化したうえで、繰延税金資産・負債の認識を免除し、代わりに注記による影響開示を義務付けています。

ポイント

OECDピラー2モデルの概要

OECDが提唱するピラー2モデルは、巨大な多国籍企業グループの実効税率が各国で最低 15 % を下回らないようにするルールです。税率が低い国で利益が計上されると、他国でトップアップ課税が発生して合計税率が 15 % 以上になるよう調整されます。EY などは、この制度が多国籍企業に新しい税務報告・コンプライアンス負担をもたらし、グループ全体の税負担に影響するため、各社に準備を促しています。インド国内だけで完結する法人には影響が限定的ですが、日本やシンガポールの親会社を持つインド子会社など国際グループに属する企業は、自国の税率とグループ全体の税率バランスを常に把握する必要があります。
 

AS22改正の具体的な内容

MCAの改正では、ピラー2課税をAS22の対象税金に含める一方で、ピラー2課税に関する繰延税金資産・負債を認識せずに済む例外が設けられました。企業は、ピラー2課税が発生しても当期税費用で処理し、繰延税金として計上しなくてよいとされています。ただし、例外を利用する場合には「繰延税金を認識しない理由」を注記で説明し、ピラー2税額を別途開示しなければなりません。さらに、ピラー2法制が各国で成立済みだが未施行の場合でも、自社にどの程度の税負担が生じる可能性があるか、適用利益の割合や実効税率への影響を定性的・定量的に開示する義務があります。小規模・中規模企業(SMC)には一部開示免除規定があります。改正は公布日から即時施行され、開示規定は2025年4月1日以降に開始する会計年度から適用されます。
 

各国の法制状況がインド企業に関係する理由

ピラー2は国単位ではなく、多国籍企業グループ全体の税負担を均衡させる制度です。そのため、日本やシンガポールなどグループ他国の実効税率が 15 % を下回り、ピラー2法制が成立している場合、グループ全体で追加課税が発生し、インド子会社の財務報告にも影響が及びます。今回のAS22改正では、各国のピラー2法制が「制定または実質的に制定されているが未施行」の段階でも、将来負担額や実効税率への影響を開示するよう求めています。会計上は、投資家や親会社に対して次年度以降の税負担見込みを示すことで、企業価値評価の透明性を高める狙いがあります。よって、インド法人が国内法だけを見て判断するのではなく、グループ全体のピラー2対応状況を把握することが不可欠です。
 

多国籍企業が注意すべきこと

ピラー2の導入により、インドを含む多国籍企業グループは、次のような対応が求められます:
 

・グループ全体の実効税率を算出し、税率が 15 % 未満となる国や事業を特定する。
 

・各国のピラー2法制の成立・施行状況をモニターし、未施行であっても将来の税負担を試算する。

・繰延税金としての会計処理は不要でも、注記で潜在的な負担額・対象利益割合・実効税率への影響を説明するためのデータ整備と内部統制を強化する。

・海外親会社や連結グループの財務報告にも影響が及ぶため、親会社の会計基準や情報開示要件との整合を図る。

まとめ

AS22の改正は、インド企業がOECDピラー2モデルに伴う国際的な最低税負担制度に早期対応するためのものです。繰延税金の認識免除により会計処理の複雑さは軽減される一方、グループ内の他国でピラー2法制が成立しているか否かにかかわらず、将来の税負担や実効税率への影響を定性的・定量的に開示する責務が課されました。ピラー2は15 %の最低税率を世界的に確保する仕組みであり、多国籍企業は、自社が属するグループの税率構造や各国法制の進捗を把握し、早めにシステム・データ整備を進めることが求められます。インド国内のみの企業には影響が限定的ですが、海外親会社を持つインド子会社や複数国展開企業は、この改正に基づく注記義務や情報開示を適切に行うことで、透明性を高め投資家の信頼を得ることが重要です。

本日は以上になります。
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Creater : 圭良 亀