タイへの販売会社進出の設立スキーム(IPO、IBCなどのライセンス情報込み!)
  
Topic : Establishment
Country : Thailand

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今回は
【タイへの販売会社進出の設立スキーム(IPO、IBCなどのライセンス情報込み!)】というテーマで、お話していこうと思います。


タイへの販売会社進出の設立スキーム
(IPO、IBCなどのライセンス情報込み!)

 

2018年末まで発行されていたITCが廃止となり、IBCライセンス、また今年からIPOが復活したこともあり、
制度が変更しつつありますので、ぜひご確認頂ければと思います。

 

ここでは有形の物品を販売する卸売業と小売業を「販売会社」とします。広告やサービス業など、
物品の販売以外のサービス業について は、「販売会社以外のサービス会社を設立する方法」を参照してください。

販売会社は、外国人事業法の規制対象業種になっていますが、最低資本金1億バーツ以上を出資すれば、
外資100%会社を設立することが可能です。

上記の最低資本金の要件を満たせない場合でも、外国人事業許可を取得する、もしくはBOIの認可を取得することができれば、
外資 100%会社を設立することができます。

■資本金1億バーツ以上の外資100%会社を設立する方法…❶

資本金1億バーツ以上を出資すれば、外国人事業法の規制の対象とはならないため、外資100%出資の会社を設立することができます。

ここで言う資本金については、「登録資本」であるか「実際の払い込み資本」であるか議論がされていましたが、
事業開発局は「実際に払い込まれている必要がある」と、明確な見解を示しています。
また、卸売業と小売業を同時に行う場合には、資本金2億バーツ以上の払い込みが必要であると解釈されています。

通常の会社設立手続のみで事業を開始できるため、下記のその他の方法に比べて簡便です(会社設立手続は、後述参照)。

 

■外国人事業許可を取得して外資100%会社を設立する方法…❷

❶の資本金要件を満たせない場合でも、外国人事業許可を取得すれば、外資100%会社を設立することができます。
ただし、外国人事業許可は実務上取得が難しいといわれています。外国人事業許可を取得するためには、タイの国益になること、
既存の国内企業の利益を毀損しないこと、雇用創出、技術革新、タイ国内の 外資企業向けあるいは海外向け事業であること、
などの点で審査基準をクリアする必要があります。 外国人事業許可の取得手続は後述します。

 

■BOIの認可を取得して外資100%会社を設立する方法…❸

商社等の卸売事業を行う事業者のために、BOIは2018年末までITCとい国際貿易センター (ITC:International Trading Center)という制度に対して、
許可を出しておりましたが、現在新規発行は廃止されております。

現在、商社等の卸売業を外資100%で行うことができるBOIライセンスとしては、
国際ビジネスセンターIBC(International Business Center)及び、
国際調達事務所IPO(International Procurement Office)の使用を許可しています。

 

IBC[国際ビジネスセンターとは]

国際ビジネスセンターは、IHQ,ITCといった地域統括会社機能をもつIHQ,

国際貿易センターとして、商社機能を持つ、ITCが2018年末で申請不可となり、
2つのライセンスを統合した形で1つのライセンスとして発行されるようになりました。

 

IBCの詳細は下記の通りとなります。

 

◇条件

事業範囲

 

<IHQ事業>

タイ国外の最低1社の関連会社に対し、役務の提供を行う。

(例:管理サポート、研究開発や研修、財務アドバイス、市場調査)

※関連会社とは、25%以上の株式を直接、間接的に保有していることを定義する。

 

<ITC事業>

三国間貿易、輸入、輸出、国内卸取引を行う。

 

*IBCでは、IHQ業務とITC業務を行うことができるが、ITC業務を希望する場合、
IHQ事業のうち、最低 1つの業務を必ず行う必要がある。

 

資本金

1,000万THB以上

 

従業員

3年以内にIBC事業下で勤務する従業員 10 名以上の雇用が必要。

(金融サービスを行う場合は、従業員5名以上)

※10人の中には、外国人、タイ人が含まれているが、外国人だけというのが原則許可されていません。

 

経費

歳入局の恩典を取得したいようであれば、IBC事業にかかる経費(従業員給与等)が6,0000万THB以上。

*歳入局の恩典を取得しない場合、経費の制限はなし。

 

◇恩典(BOI恩典)

 

外国人就労

IBC事業下の外国人従業員に対し、ビザ延長、労働許可証(WP)の取得の簡易化

土地所有

土地所有可能

機械輸入税

研究開発および研修用の機械の輸入関税の免除

※輸出用製品製造のための原材料の輸入関税は免税対象外となる。

 

◇恩典(歳入局恩典)

 

法人所得税

IBC の業務に必要な経費の支出額により、

以下の通り、法人所得税の軽減税率が適用される。

・6,000 万バーツ以上の場合:8%

・3 億バーツ以上の場合:5%

・6 億バーツ以上の場合:3%

源泉所得税

タイ国外の関係会社に支払う配当金、および借入利息の源泉税を免除

特定事業税

関係会社からの受取利息に対する特定事業税を免除

個人所得税

IBC 事業下の外国人社員の個人所得税を15%に軽減

 

IPO[国際調達事務所とは]

国際調達事務所は、タイの投資奨励委員会(BOI)が、約3年前ITCなどのライセンス(現在は、ITCは廃止)が使用される前に運用されていたIPOを再度、
認可する正式決定を行い、2021年1月にIPOの詳細が開示されました。2014年に一度、IPOに対する新規ライセンスの発行が停止され、

ITC(国際貿易センター)の発行が開始されましたが、OECDより移転価格などの指摘を受け、
現在、ITCはIHQ(地域統括センター)と統合され、上記で記載したようにIBC(国際ビジネスセンター)とされ運用をされています。
ただ、このIBC,当時のITCやIHQの認可と比べ、従業員の雇用規制(3年以内に10人以上)などの要件や、
必ず地域統括機能(貿易センターのみの機能では不可)を持たなければならないなどの要件が、
加わったため申請数は思ったより、伸びていないのが現状となっており、申請をしている日系企業もITCが承認されていた時と比べ、
格段に少なくなっていました。ただ、タイ政府としては、国際的な貿易センターをタイに増やしていきたい意向もあり、
2021年より再度、IPOが認可された流れとなります。

 

IPOの事業内容、また主な認可要件は下記の通りとなります。

 

・資本金:1千万THB以上

・自社倉庫又はレンタル倉庫、在庫管理に特化したITシステムの保有

・適切な製品調達活動および製品管理活動(品質検査、製品梱包など) 

・タイ国内を含む複数の調達先(国内調達比率制限なし)

・国内の卸販売および/または輸出を行うこと(三国間貿易は不可)

 

となります。

 

ITCとの主な違いは、三国間貿易が行えないこと、また倉庫機能を保有しないとならない、などのことが主にあげられます。

 

また、税務上の恩典も、関税の免税などしかなく、法人税や個人所得税に関しては付与されません。

 

ただ、商社機能を持つタイ法人は、ITCが廃止されてから独資で設立することはIBCの取得以外難しい状況であったため、
IPOの認可は今後日系企業のタイへの進出を促進するきっかけになるかもしれません。

 

下記、販売会社における設立方法の比較をまとめた図を添付します。

 

認可を受けるために共通していることは、タイ企業と利益が競合しないこと、技術移転をもたらすことなどです。
したがって、タイ国内企業向けに販売するケースよりも、タイに進出している外資企業向けに販売を行うような商社の方が認可を受けやすい傾向があります。
技術移転をもたらすという点では、自社や学校などで定期的な講習を開催することなどで認可を受けることも可能です。
タイにとってメリットがあると判断されるスキームであれば、認可を積極的に活用することでビジネスを有利に進めることができます。


この記事に対するご質問・その他タイに関する情報へのご質問等がございましたらお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Creater : Shuhei Takahashi