タイでビジネスを展開する際に重要な税制の一つが、源泉徴収税(Withholding Tax, WHT)ですが、今回はそのタイのWHTに関する基本情報をまとめました。
1.源泉徴収税の概要
源泉徴収税(Withholding Tax, WHT)は、所得税の徴収方法の一つで、代金を支払者が支払いの際に事前に所得税を差し引いた金額を、受領者に払い、国に等に納付する制度です。
毎月の給与取得のほか、配当や利子、サービス料、ロイヤリティなどの支払いの際に、この源泉徴収税が適用されます。
またそれぞれにかかる税率に関しても、異なりますので、注意が必要です。
2.源泉徴収税の処理
源泉徴収税は単に差し引くだけではなく、その証明として源泉徴収票(Withholding Tax Certificate)を作成し、先方に交付する必要があります。さらに、差し引いた税額は翌月7日までに税務署に納付しなければなりません。この手続きは月末月初に集中するため、効率的な管理が求められます。
3.請求書と源泉徴収
請求書発行時には源泉徴収額を考慮した金額で支払いを行う必要があります。例えば、サービス料30,000バーツの場合、3%の源泉徴収後に支払うべき金額は30,000バーツから900バーツを引いた、29,100バーツとなります(※VATを考慮に入れておりません)。
そのため、計算ミスを防ぐためにも経理担当者や会計事務所との連携が重要です。
※VATを考慮した場合、サービス料30,000バーツに対し、まずVAT(7%)の2,100バーツは上乗せした後、源泉徴収税額(3%)の 900バーツを差し引いた31,200バーツを支払う形となります。
4. 源泉徴収税率
タイでは多くの取引が源泉徴収の対象となります。以下は主な取引とその税率です:
タイ国内にかかる源泉税とその税率
- 配当金: 10%
- 利子: 1%
- サービス料: 3%
- 賃貸料: 5%
-ロイヤリティ: 3%
-広告料: 2%
タイ国外への支払いにかかる源泉税
- 配当金: 10%
- 利子: 15%
- サービス料: 15%
- 賃貸料: 15%
-ロイヤリティ: 15%
-広告料: 15%
これらの税率は、日本と比べて多岐にわたる項目で適用されるため、注意が必要です。
5. 賃貸料とサービス料の源泉税への補足(タイ国内)
賃貸料とサービス料には異なる税率が適用されます。賃貸料には5%、サービス料には3%の源泉税率が設定されています。通常、賃貸契約では賃貸料とサービス料を分けて請求することが一般的であり、これにより税負担を軽減することが可能です。ただし、税務署は不自然に高いサービス料を許容しないため注意が必要です。
6.外取引と租税条約
タイ国外へのサービス提供や取引には、それぞれの国の内国法及び租税条約に基づく源泉税が適用されます。
租税条約によって軽減される場合もありますが、それぞれの該当する項目や税率に関しては事前の確認が重要です。
7.利益還流と源泉税
利益を海外へ還流する際にも源泉徴収税が発生します。配当や利子による還流にはそれぞれ10%および15%の源泉税が適用されます。租税条約によって軽減される場合もありますが、国内法と同率であることも多いため事前の確認が重要です。
このように、タイで事業を行う際には、WHT制度を理解し、適切な処理を行うことが不可欠で、各種所得に対する適用税率や租税条約について詳しく把握し、正確な源泉徴収を行うことが需要となります。
【タイビジネスのことは「東京コンサルティングファーム」にお任せください】
今回は「タイの源泉徴収税(WHT)について」について解説しました。
私たち「東京コンサルティングファーム」は、会計事務所を母体とした20ヵ国超に展開するグローバルコンサルティングファームです。
海外現地では日本人駐在員とローカルスタッフが常駐しており、また各拠点に会計士・税理士・弁護士など専門家チームが所属しているため、お客様の多様なニーズに寄り添った対応が可能です。
本稿で解説した、タイの源泉徴収税に関するご相談はもちろん、海外進出から海外子会社管理、クロスボーダーM&A、事業戦略再構築など、海外進出に関する課題がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は、タイに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。