会社登記完了後、多くの企業はシンガポール地場の銀行の口座の開設を行います。プロセスは透明かつ効率性が高く一部銀行では、サイナーの渡星なしにオンラインでの面接のみで開設を完了することができ ます。一方で、資金洗浄や不正資金供与などのリスクを最小限にすべく、シンガポールの銀行ではデューデリジェンスが厳格に行われます。そのため、多くの日系企業が、会社登記は完了したものの、銀行口座がなかなか開けず、ビジネスが開始できないという事態に陥ります。今回は、そんなシンガポールでの法人口座の開設の難しさと、開設のためのポイントについて解説していきます。
1.厳格さを増した新規設立法人の口座開設審査
もとより開放的な経済・金融政策をとっているシンガポールでは、必然的に多くの資金の出入りが発生します。そのため不正資金の流入に対しては元よりかなり警戒していたシンガポールですが、パナマ文書の発表以降、更にその警戒が高まりました。政府が特に警戒するのは、シンガポールで口座を開設を使用とする際に、その口座のBeneficiary(受益者)が、シンガポールの居住者ではない場合です。法人が口座を開設する場合は、銀行をその会社の株主の居住地を判断します。国の金融機関に対してのガイドラインも厳格化されいる状況で、コンプライアンス順守のための負担が多い、外国居住者の口座(株主が外国にいるシンガポール法人の口座を含む)の開設をためらうのも無理がありません。
2.厳しいKYCプロセスとその対策について
勿論、非居住者の口座であるからと言って、必ずしも開設できないというわけではありませんが、銀行内で開設の稟議を通すためには、信用力を担保するのに十分な量の資料を入手する必要があります。従って、KYC(Know your Customer)といわれる審査手続きの負担は軽くはありません。具体的に、銀行が気にするチェックポイントは大きく2つあります。1つは、会社概要です。新規に設立したばかりの法人のHPは当然作ってないことの方が多いので、その場合親会社の概要を共有する必要があります。(株主が個人であれば、個人の履歴書などの提出も求められることも少なくありません。)2つ目は、ビジネスについての理解です。簡単に言えば、本当にシンガポールでビジネスを行う予定があるのかの確認をするということです。そのため、口座もまだ開設できておらず、ビジネスはまだこれから、という状況にも関わらず、見込み顧客のリストや、Pro Forma Invoice(見込み請求書)などの資料の提出を要求されます。大規模なビジネスであれば、予め十分なコネクションを現地で確保したうえで、会社の設立を行うということは往々にしてあるため、提出が不可能な資料ではないかもしれませんが、シンガポールに進出する多くの企業はこの限りではなく、多くは小さな資本で、スモールビジネスとしてスタートします。だからといって、銀行提出用のために、存在しない見込み顧客リストを無理矢理作り、偽の資料を作ることはむしろ逆効果です。発覚すれば、二度とシンガポールで口座を開設できなくなるどころか刑事罰に問われる可能性もあるので、絶対にやってはいけません。提出できない資料は、提出できないと正直に答えたうえで、別の方法で会社の収益見込みや安全性を説明していくのが、スモールビジネスの口座開設のセオリーです。親会社がそれなりの規模のビジネスを行っている会社であれば親会社側の実績をアピールしてもいいですが、もし簡単な事業計画表を作成できるようであれば、それを作成し提出できればより効果的です。(会計事務所等ののレビューを経ていればより効果的ですが、マストではありません)
3.日系メガバンクや外資系の銀行での口座開設はどうなの?
日系メガバングのシンガポール支店での開設は、日本での取引があることが大前提となります。その他にも、デポジット額の要件等がある場合があります。もし日本で既に付き合いがある場合は、開設チャレンジしてみてもいいかもしれません。外資系の銀行の場合は、新規設立会社にとっては、地場の銀行以上に難易度が高いと言わざるを得ず、 該当 国でのビジ ネスがある ( 例えばState Bank of India(SBI)であれば、インドでの取引がなければ難しい等)、もしくは株主に圧倒的な資本力とブランドがある等でなければ、殆どの場合、新規法人の口座開設は至難の業 です。しかし、外資銀行の口座を持っていることのメリットは多く、例えば米系の銀行は為替レートの競争力も高く、海外ビジネスを行う場合は非常に有利に働きます。決算を2~3周ほど終え、シンガポールでのビジネス実態を確立したうえで、2個目、もしくは3個目の口座として開設にチャレンジするのはありかもしれません。
今回は、シンガポールでの法人口座事情について解説しました。難易度は上がっているものの、しっかりと対策を行ったうえで臨めば決して不可能ではありません。弊社でも新規口座開設支援のご相談、是非お待ちしております。