2025年12月は、企業のキャッシュフロー、ガバナンス、そして労務コストに直接影響を与える非常に重要な法令・公告が集中しました。本号では、2026年の経営計画に反映させるべき最重要トピックスを深掘りして解説いたします。
1. 【税務・会計】増値税還付の「標準化」と会計責任の「厳格化」
2025年12月、中国の税務当局は企業の資金繰り支援とガバナンス強化の「アメとムチ」を同時に打ち出しました。
まず、実務的な「アメ」として注目されるのが、増値税の還付制度に関する一連の公告です。財政部と国家税務総局が発表した「増値税の期末留保税額還付政策の完全化に関する公告」(2025年第7号)および「国家税務総局公告2025年第20号」により、仕入れで払いすぎた税金を現金で受け取れる「留抵退税」のルールが整理されました。これにより、還付申請のプロセスが標準化され、企業はより予見可能性を持って資金計画を立てられるようになります。
一方で「ムチ」となるのが、12月19日に発表された会計業務責任の明確化に関する意見と「滞納税公告弁法」です。今回の指針では、会計データの正確性について、担当者のみならず経営トップを含めた組織全体での法的責任が強調されています。また、税金の滞納が発生した際にはその情報が社会的に公告される基準が整備されました。これは、企業の社会的信用(レピュテーション)に直結するため、日系企業にとっては事務的なミスによる延滞も許されない、これまで以上に厳しい納税管理が求められることになります。
2. 【労務】湖北省の介護休暇導入と上海の契約終了を巡る議論
労務面でも、企業のコスト負担と法的リスクを左右する重要な動きがありました。
地方レベルでの大きなインパクトとして、12月18日に可決された「湖北省養老サービス条例」が挙げられます。本条例は、介護が必要な高齢の親を持つ独りっ子の従業員等に対し、年間10~15日の有給介護休暇を付与することを提唱しています。湖北省に拠点を持つ企業は、就業規則への反映や人員配置の再検討が必要になりますが、これは高齢化が進む中国全土における労務規定のモデルケースとなる可能性が高く、他地域への波及にも注視が必要です。
また、上海を中心に議論を呼んでいるのが、2025年9月に施行された最高人民法院の「解釈(二)」第10条です。この条項により、「2回の有期労働契約を締結した後、雇用単位(会社)に契約を終了する権利が残されているのか」という実務上の解釈が分かれています。不適切な契約終了は違法解雇のリスクを伴うため、現地法人の人事担当者は最新の判例や解釈に基づいた慎重な対応が求められます。
3. 【投資・貿易】2026年1月施行の規制と優遇措置
新年度早々、貿易実務においても変化があります。2026年1月より、一部の鉄鋼製品に対して輸出許可証管理が開始されるため、関連する貿易取引がある企業は通関手続きの遅延に注意が必要です。
一方、投資環境ではポジティブな動きも見られます。海南自由貿易港の「封関」が12月18日より開始され、ゼロ関税や所得税優遇を享受できる体制が本格化しました。さらに、外商投資企業が国内利益を再投資する際の奨励措置も強化されており、中国国内での事業拡大を検討する企業にとって追い風となっています。
まとめ
今後は、増値税還付などの政策的恩恵を確実に享受する一方で、厳格化された会計責任や滞納税公告に対応するための内部統制の再点検が不可欠です。また、湖北省の介護休暇のように、地方ごとに異なる労働規定が導入される傾向があるため、拠点所在地の最新法令を継続的にモニタリングすることが、不必要な法的リスクを回避する鍵となります。