インドでの退職金制度について理解を深めることは、現地でビジネスを行う際に欠かせない要素です。本記事では、インドの退職金支払法(The Payment of Gratuity Act, 1972)について、初心者にもわかりやすく解説します。これにより、企業経営者や駐在員が適切に対応できるようサポートします。
1.インドの退職金制度の基本
インドの退職金制度は、1972年に制定された「The Payment of Gratuity Act, 1972(退職金支払法)」に基づいています。この法律は、労働者の長期勤続に対する報酬として、雇用主に退職金の支払いを義務付けています。
退職金支払法の適用条件
・勤続年数が5年以上の労働者が対象
・事業所の労働者数が10人以上の場合に適用
ここで重要なのは、「事業所」という概念です。労働者数のカウントは、インド法人全体ではなく、各事業所ごとに行われます。つまり、複数の支店や工場を持つ企業の場合、それぞれの拠点で10人以上の労働者がいるかどうかで適用が判断されます。
2.勤続年数の計算方法
勤続年数は6か月を超えて勤務した年を1年としてカウントします。これにより、短期間の勤務でも一定の条件を満たせば退職金が受け取れる可能性があります。
3.法定退職金額の計算式
退職金額は以下の計算式で求められます:
最後に受け取った給与額×15÷26×勤続年数
この計算には基本給(Basic salary)と物価手当(Dearness Allowance)のみが含まれ、それ以外の手当は除外されます。また、最大で200万ルピーが上限とされています。
4.適用範囲と注意点
・適用範囲: 退職金支払法は事業所ごとに判断されるため、インド法人全体ではなく個々の事業所で労働者数を確認する必要があります。法律適用後に労働者数が10人を下回っても、適用は継続されます。
・契約上の優先事項: 雇用契約書や就業規則で法定以上に有利な条件が設定されている場合、それが優先されます。これは労働者にとって有利ですが、企業側には追加の負担となることがあります。
5.企業への影響と対策
インドでビジネスを展開する企業は、この退職金制度を理解し、適切な対応策を講じることが重要です。特に、法定以上の条件を設定する際には、その影響を十分に考慮しなければなりません。また、制度の詳細を把握しないまま運用すると、不必要なコスト増につながる可能性があります
6.インドビジネスのことは「東京コンサルティングファーム」にお任せください
今回は「インドの退職金制度」について解説しました。
私たち「東京コンサルティングファーム」は、会計事務所を母体とした20ヵ国超に展開するグローバルコンサルティングファームです。
海外現地では日本人駐在員とローカルスタッフが常駐しており、また各拠点に会計士・税理士・弁護士など専門家チームが所属しているため、お客様の多様なニーズに寄り添った対応が可能です。
本稿で解説した、インドの退職金制度に関するご相談はもちろん、海外進出から海外子会社管理、クロスボーダーM&A、事業戦略再構築など、海外進出に関する課題がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は、インドに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。