インド非鉄金属EPR制度の導入と2025年有害廃棄物管理改正規則の概要
  
Topic : Other
Country : India

【概要】

インド環境森林気候変動省(MoEFCC)は 2025 年 7 月 2 日、「2025 年有害及びその他の廃棄物(管理及び越境移動)改正規則」を公布した。同規則は2026 年 4 月 1 日に施行される。本改正の重要な特徴は、非鉄金属(アルミニウム・銅・亜鉛)を使用した 18 種類の製品を対象に新たな拡大生産者責任(EPR)を導入した点にある。

生産者には、

  • CPCB(中央公害管理委員会)ポータルでの登録義務、
     
  • EPRリサイクル目標の達成、
     
  • EPR証書(EPR Certificate)を通じた相殺の実施、
     
  • 年次・四半期ごとの報告
     

が課される。また製造者には、2028 年度からインド国内でリサイクルされた金属原料を一定割合以上使用する義務(再生材使用義務)が追加される。

さらに、大量消費者にもスクラップ回収体制の整備が求められるなど、本規則はインドの循環型経済への移行を明確に後押しする性格を持つ。2016年規則および 2024 年改正案を基礎として制度が大幅に強化され、輸入品やスクラップを扱う事業者も生産者に該当し得るため、サプライチェーン全体での管理高度化が不可避となる。

 

【ポイント】

1. 対象範囲の拡大と生産者の定義の明確化

生産者(Producer)の定義が拡大され、次のいずれかに該当する事業者は生産者として扱われる。

  • 対象製品を自社で製造する者
     
  • 他社製造品を自社ブランドとして販売する者
     
  • 完成品または部材を輸入して販売する者
     
  • 非鉄金属スクラップを輸入して国内市場に供給する者
     

これにより、国際サプライチェーンを有する企業は、輸出入取引の段階から EPR 責任を負う可能性が生じる。特に輸入者の位置付けが強化され、「インド国内に製品が流通する時点で生産者責任が発生する」ことが明確になった。

2. 対象 18 製品の範囲

対象は非鉄金属を含む多様な製品群であり、主に以下のような製品が指定されている:

  • 飲料缶
     
  • 包装フィルム
     
  • ドア・窓・建築資材
     
  • ACP(アルミ複合板)
     
  • 家具・屋根材
     
  • 電線・ケーブル
     
  • 自転車・玩具
     
  • 変圧器・発電機・集中空調(HVAC)機器
     
  • アパレル部品
     

製品範囲が多岐にわたるため、非鉄金属を使用するほぼすべての産業が影響を受ける規模感となっている。

 

3. EPR制度の要点:義務量の算定・EPR証書・平均寿命の導入

生産者が達成しなければならないリサイクル義務量は、次の式で算定される:

上市量 × 製品の平均寿命(Average Lifespan) × リサイクル率(年度別に設定)

ここでの重要ポイントは以下の通り:

◎ 平均寿命(Average Lifespan)を導入

製品ごとに CPCB が平均寿命を設定し、耐用年数に応じて義務発生時期が変わる仕組みになっている。
・耐用年数が短い製品=義務が早期に発生
・耐用年数が長い製品=義務発生が後年に移行

◎ EPR証書システム

生産者は実際のリサイクルを自ら行う必要はなく、登録リサイクル事業者が発行する EPR 証書を取得することで目標達成とみなされる。

  • 証書は CPCB のオンラインプラットフォームで電子的に発行・移転
     
  • 流通履歴の追跡管理確保のため、発行量・使用量の全履歴が管理される
     
  • 証書市場の流動性が、企業のコンプライアンスコストに影響する可能性が高い
     

◎ 未達成時の環境補償金(Environmental Compensation)

義務を達成できなかった企業には、未達分に応じた環境補償金が科される。

 

4. 製造者の義務:2028年度からの再生材使用

製造者(Manufacturer)は、以下の義務を負う:

  • 国内でリサイクルされた金属原料(アルミ・銅・亜鉛)を一定割合以上使用することが必須化
     
  • 対象製品・年度ごとの割合は今後 CPCB が通知
     
  • 使用実績を証明する書類を保持し、監査に対応する必要あり
     

この制度により、国内リサイクル材の需要が増加し、金属資源の国内循環市場が拡大すると見込まれる。

 

5. 大量消費者の管理責任

年間 1,000 トン以上の対象製品を使用する事業者には、次の義務が課される:

  • 自社施設内に スクラップ回収拠点を設置
     
  • 発生したスクラップを 登録リサイクラーまたは登録ディーラーへ引き渡すこと
     
  • 四半期単位での回収管理記録の保持と報告
     

大規模工場、物流企業、EC事業者、建設事業者などが該当する可能性が高い。

 

【まとめ】

2025 年改正規則は、インドの非鉄金属資源の循環利用を強力に推進するための包括的な制度変更であり、生産者・製造者・大量消費者の三者に明確な義務と責任を課した点が最大の特徴である。

特に:

  • 平均寿命を用いたリサイクル義務量の算定方式
     
  • EPR証書による電子取引制度
     
  • 再生材使用義務(2028 年度〜)
     
  • 輸入品・スクラップ輸入者の生産者化
     

は、企業の調達・製造・廃棄の各段階に構造的な変更を求める。

今後、CPCB が製品別平均寿命、再生材割合、EPR 証書取引の具体ルールを順次公表することで制度が本格稼働する。企業は、早期の登録、データ整備、社内体制構築、サプライチェーン上での役割明確化を進めることが求められる。

インド市場での事業継続と環境コンプライアンス確保には、本規則の正確な理解と全社的な対応体制が必須となる。

 

本日は以上になります。

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Creater : 圭良 亀

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