インドネシア金融庁(OJK)は、2025年12月22日付で、海外に本店を置く金融機関がインドネシア国内に設置する「駐在員事務所」に関する新たな規制、POJK Number 41 of 2025(以下、POJK 41/2025)を制定・公布いたしました。
本規制は、これまでグレーゾーンが多かった駐在員事務所の活動範囲を明確に「制限」するとともに、代表者の居住要件を厳格化するなど、ガバナンス体制の抜本的な見直しを迫る内容となっています。既存の事務所においては2026年6月までの猶予期間内に対応が必要となります。以下にその詳細を解説いたします。
1. 規制の背景と対象範囲
これまで一部の海外金融機関の駐在員事務所において、実質的な営業活動や不透明な資金勧誘が行われている懸念がありました。OJKは本規制を通じて監視体制を強化し、国内の金融秩序と消費者保護を図る狙いがあります。
▼ 対象となる海外機関(Foreign Principals) 本規制は、以下の業態を持つ海外法人が設立する駐在員事務所(総称してKPPVL)に適用されます。
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ファイナンス会社(リース、ファクタリング、消費者金融等)
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ベンチャーキャピタル(PMV/PMVS)
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その他の金融サービス機関(LJK Lainnya)※マイクロファイナンス等を含む
2. 「やってはいけないこと」:活動禁止事項の明確化
POJK 41/2025の核心は、駐在員事務所が「支店」や「現地法人」のように振る舞うことを禁じる点にあります。以下の活動は明示的に禁止されました。
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収益活動の禁止: いかなる形式であれ、インドネシア国内で収益(手数料、利息、コンサルティング料等)を発生させる活動はできません。
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直接的な契約・実行の禁止: 駐在員事務所の名義で、クレジット契約(融資契約)、保証契約、またはデリバティブ取引等を締結することはできません。
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資金管理の禁止: 顧客からの資金預かり、または顧客への資金交付(Disbursement)を事務所が直接行うことは禁止されます。資金移動は海外本店と顧客の間で直接行われなければなりません。
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権限の制限: 駐在員事務所の代表者は、海外本店の経営意思決定(融資の最終決裁等)に関与する権限を持つことはできません。あくまで「連絡役」に徹する必要があります。
3. 「やるべきこと」:許可される役割
一方で、駐在員事務所として認められる活動は以下の通り限定されます。
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リエゾン(連絡調整): 海外本店とインドネシアの当事者との間のコミュニケーション支援。
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プロモーション: 本店のサービス紹介やマーケティング活動。
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情報収集: インドネシア市場の調査、潜在的顧客の発掘。
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モニタリング: 本店がインドネシア国内の債務者に対して実行した融資やプロジェクトの進捗状況の監督・報告。
4. 組織・ガバナンス要件の厳格化
実務上、最も影響が大きいのが組織体制に関する要件変更です。
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代表者の「国内居住」義務化: 駐在員事務所の代表者(Head of Representative Office)は、インドネシア国内に居住することが義務付けられました。これにより、海外(シンガポールや日本)に居住したまま名義貸しで代表を務めることは不可能となります。
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適格性審査(Fit and Proper Test): 代表者の選任にはOJKの事前審査と承認が必須となります。金融に関する専門知識や過去のコンプライアンス履歴が問われます。
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標識の掲示義務: オフィスの外部および内部に、OJKのロゴと共に「Kantor Perwakilan(駐在員事務所)」である旨を示す標識を設置しなければなりません。
5. 報告義務とコンプライアンス
OJKへの報告頻度と内容も詳細に規定されました。
6. 既存事務所への経過措置(タイムライン)
本規制は2025年12月22日に施行されましたが、既存の駐在員事務所に対しては以下の移行期間が設けられています。