概要
2025年12月30日、インド労働省(Ministry of Labour & Employment)は、4つの新労働法典(賃金・社会保障・労使関係・安全衛生等)に対応する中央政府ルール(Central Rules)のドラフトを官報通知として公表しました(いずれも2025年12月30日付官報通知:Industrial Relations=G.S.R. 930(E)、OSHWC=G.S.R. 934(E)、Social Security=G.S.R. 935(E)、Wages=G.S.R. 936(E))。
本ドラフトは、施行後の運用に必要な「具体的手続・様式・登録・報告」等を定める下位規則で、最終化に向けて意見募集が開始されています。
なお4法典は、政府発表および各通知文面上、2025年11月21日から全国で効力を持つ(各S.O.通知)位置付けが示されています。
※中央政府ルール(Central Rules)とは何か
法典(Code)で定めた枠組みを実務で運用するための下位規則です。インドの労働法制は、大まかに 「法典(Code)」→「ルール(Rules)」→「様式(Forms)や運用」 の順で具体化されます。Code(法典)は、国会で成立する法律本体そのもの。Central Rules(中央政府ルール)は、その法律を現場で回すための 下位規則(実務マニュアルの法的版)です。具体的には、登録・届出・報告、必要書類、帳簿管理、各種様式(Forms)など「手続きのやり方」を定めます。つまり、Codeが施行されてもRulesが固まらないと、企業が何をどの様式でいつ出すかが確定しません。今回の官報公表はこの運用の具体化が進んだ点に意味があります。
ポイント
・意見募集期限が異なる
意見募集の締切は「官報の写しが一般に提供(公開)された日」を起算して決まります。政府は、その起算日から一定日数後に提出意見を検討するため、その検討日までに意見を提出する必要があります。
労使関係:官報の写しが一般に提供された日から30日後に検討(=その前に意見提出)
賃金・社会保障・安全衛生等:同様に45日後に検討
・「旧法+旧ルール」からの置換を前提に設計
例えば賃金分野では、最低賃金、賃金支払、ボーナス、男女同一賃金等の旧制度下で分散していた既存ルール群を中央ルール群に一本化して置き換える構成が明記されています。
同様に社会保障分野でも、公的医療保険(ESI)や退職後の積立制度(EPF)等の旧運用ルール群が中央ルール群に置き換えられる対象として列挙されています。
安全衛生分野も、これまで 職場のタイプ別に分かれていた「安全衛生・労働環境」の運用ルールを、1つの枠組みにまとめて整理し直す形になっています。
日系企業への影響領域
賃金定義の整理(給与設計・社会保険コスト):新法典の賃金概念に合わせて、基本給・手当・変動給の扱いを棚卸しする必要が出ます(PF/ESI等の基礎に波及し得るため、会計・原価にも直撃)。新法施行後は「不透明が続く可能性」もJETROが指摘しています。
労務手続の標準化・デジタル化:登録、各種届出、様式(フォーム)運用が再編されるため、インド拠点の人事総務オペレーションをルール最終化前提で点検した方がいいです。
州ルールの有無がボトルネック:労働は連邦と州の権限が絡むため、中央ルールだけでなく、拠点所在州のルール整備状況が実務を左右します。
まとめ
日系企業としては、①賃金定義と社会保障コストの試算、②人事労務手続(登録・届出・帳票)の現状把握、③所在州のルール整備状況の確認、の3点を先に行うのが現実的といえます。
本日は以上になります。
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