中国、2028年までに長期介護保険制度を全国導入へ
  
Topic : Other
Country : China

中国共産党中央委員会弁公庁および国務院弁公庁は2026年3月25日、「長期介護保険制度の確立を加速することに関する意見」を発表した。2028年末を目標に、長期介護保険制度を全国で本格導入する方針が示された。

1. 制度導入の経緯
中国では2016年から長期介護保険制度の試行導入が開始され、これまで49の都市で実施されてきた。今回の意見では、既存の試行都市についても2028年末をめどに新たな基準へ段階的に統一することが求められている。
約10年にわたる試行期間を経て、今回初めて全国一律の制度化へ向けた明確な工程表が示されたことになる。

2. 制度の基本的な枠組み
同意見では、長期介護保険制度を、要介護者に対する基本的な生活支援および関連する医療ケアについて、サービス提供と費用保障を行う公的な社会保険制度と位置づけ、全国民を被保険者とすることを明記した。
給付の対象と適用サービスについては、介護保険の給付対象は年齢を問わず、重度の介護を必要とする国民とされ、在宅サービス、デイサービス、施設サービスの利用時に適用される。今後は、経済発展の状況や制度の整備状況を踏まえつつ、給付対象範囲の拡大を検討するとしている。また、介護サービス分野におけるスマート技術の導入や、福祉用具についても、介護保険の給付対象とする可能性を検討・研究するとしている。

3. 給付水準と地域間格差
制度設計においては、全国統一の枠組みと地域の柔軟性のバランスが工夫されている。制度の基本的な枠組み(保険料率、サービス内容、要介護認定基準など)は全国共通としつつ、給付水準については、国が示す基本方針(被保険者の条件によって給付率を50%程度または70%程度とする)に基づき、各省・市・自治区が地域事情に応じて適度に調整することを認めている。また、在宅・デイサービスの利用促進を目的に、これらの分野については給付率を相対的に高めることも可能とした。
年間の給付上限については、各地域における前年度の住民1人当たり可処分所得の50%を超えてはならないと規定している。中国では地域間の可処分所得の格差が大きく、例えば2025年の住民1人当たり可処分所得は、上海市が9万1,987元(約211万5,700円)に対し、黒龍江省は3万2,851元となっており、給付限度額に大きな差が生じることになる。
この格差は、高所得地域と低所得地域でサービスの質・量に違いが生まれる可能性を意味しており、制度の公平性をめぐる議論も今後予想される。

留意点と今後の注視ポイント
具体的な運用策については各地域に委ねられていることから、今後は関心のある地域ごとの実施細則や運用動向を注視する必要がある。
全国一律の制度とはいえ、各省・市レベルで保険料率・給付水準・認定基準・手続きが異なるため、進出先の地方政府の細則が出揃うまでは具体的な事業計画の策定は難しい面もある。2026〜2027年にかけて各省の実施細則が順次公表されていく見通しであり、引き続き情報収集が欠かせない。 

Creater : Kobayashi Yusuke