今回は2026年1月1日から施行予定の増値税法(VAT法)についてお知らせします。
中国で長年「暫定条例」に基づいて運用されてきた付加価値税制度について、初の成文法「VAT法」が2024年12月25日に可決され、2026年1月1日施行予定となりました。
税率構造は現行の13%/9%/6%を基本継続しつつ、定義や課税範囲、控除・還付の考え方を法令レベルで明確化したのが特徴です。
とくにクロスボーダー取引における「消費地原則」の強化、売上高の定義明確化(非金銭対価の取り扱い等)、超過仕入控除税額の還付制度の法定化など、国際的なベストプラクティスとの整合を志向した改定が示されています。
制度の骨子
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税率体系:物品の販売・輸入は13%、運輸・通信等は9%、多くの近代的サービスは6%。簡易課税(3%)や特定業種の特例も維持されます。
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課税範囲と国内判定:商品原産地・不動産所在・金融商品の発行地/売り手属性等に加え、サービス・無形資産は「国内で消費」されるかで判定する整理となります。
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課税の基礎となる売上高の金銭・非金銭の経済的利益を含む総対価(一定の例外あり)と明確に定義されました。
市場価格基準や、著しく低高価格の査定規定も整備されます。
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仕入税額控除の調整:従来の制限(例:貸付サービス控除禁止)見直しの方向性や、飲食・日常・娯楽サービスの「直接消費」控除制限の明文化等が行われます。
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超過控除還付の法定化:繰越/還付の選択を可能にする枠組みを法律上の権利として位置づけました。
実務インパクト(どこが変わるのか)
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国際取引の所在判定がより制度的に
サービス・無形資産の国内課税判定で消費地原則が明確になり、越境取引のインボイス設計や拠点配置に与える影響が増大する見込みとなります。
特に中国向けデジタルサービス、ライセンス供与、クラウド/SaaS提供は、消費地・受益地の検証が必須となります。
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売上(課税標準)と価格付けの説明責任が強化
非金銭対価や社内部門間移転等を含め、市場価格の裏付けがより重要になります。
著しく低い/高い価格の査定条項が明文化されたことで、移転価格・商流設計との一体管理が求められます。
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控除・還付のガバナンスが要
超過控除還付の「権利化」により、キャッシュフロー管理の選択肢拡大が期待できる一方、控除制限(直接消費の線引き等)への証憑管理・目的適格性の説明が求められます。
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混合販売/複合販売の整理
異なる税率が交錯する取引パターンでの税率判断の明確化が進む一方、契約・請求・システム上の区分設計ができていないと逆に誤リスクが顕在化します。
企業が施行に向けて着手すべきこと
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トランザクション・マッピング
中国向け/中国発の物品・サービス・無形資産・金融商品を棚卸しし、消費地・所在・発行地/売り手属性での国内判定に引き直す必要があります。
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契約・価格ルールの整備
非金銭対価や社内振替、販促無償提供等を含む対価の定義・市場価格の規程化が必要となります。著しく低価格/著しく高価格の取引については説明資料のテンプレートを用意することを推奨します。
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インボイス/業務システム設定の改修
税率別の品目設計、混合・複合販売の区分、インプット控除トラッキングの導入・見直し。控除不可項目の自動仕訳・証憑紐付けも必須となるでしょう。
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還付戦略と証憑統制
超過控除還付の適用を受ける場合は、繰越/還付の方針、申請プロセス、証憑保存・内部牽制を整備する必要があります。
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クロスボーダーと他税目の整合
関税・消費税・印紙税・源泉税・移転価格との一体管理が求められます。
デジタル課税やデータ越境規制とも整合を図り、誤課税・二重課税を回避するように努める必要があります。
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ローンチ前テストと教育
2026年施行を見据え、想定取引を検証を行う必要があります。財務経理・営業・物流・ITの部門横断的な情報共有と施策の一貫性が必要となります。
まとめ
本法の施行により、拠点戦略・価格設計・システム戦略・内部統制までを跨ぐ税務上のオペレーティングモデルの再設計が競争力を分けます。
個別の適用判断は業種・商流・契約条件で結論が変わり得るため、専門家と連携のうえ、段階的に移行計画を策定していただくことを推奨します。