今回は、2025年改正「反不正当競争法(不正競争防止法)」の要点と実務上の留意点について述べたいと思います。
【概要】
2025年改正法は10月15日に施行され、域外適用条項(新40条)を新設し、中国国外での行為でも中国市場の競争秩序を乱し権益を害すれば処理対象となりました。
国内外の広報・販促・比較広告・SNS運用も射程に入る点が最大の構造変化です。
【主な改正点】
主な改正点は以下の6点となります。
①混同行為に該当する項目の拡充(7条)
商品名・企業名だけでなく、ドメイン、サイト名、アプリ名、アカウント名、アイコン等のオンライン識別子や、他人の著名標識を検索キーワードに設定して誤認を生じさせる行為まで明確に規制し、幇助責任も明記されました。
②商業賄賂の明確化と厳罰化(8条)
値引き・コミッションは「明示」と「真実の記帳」を義務化し、従業員の賄賂は原則として会社の行為と推定すると定められました。
あわせて賄賂行為の罰金レンジも引上げられ、責任者個人への罰金も導入されています。
③虚偽・誤認を招く商業宣伝の強化(9条)
「虚偽取引・虚偽評価(いわゆるサクラ・レビュー操作)」の幇助も禁止されました。
④ネットワーク不正競争の明文化(13条)
データやアルゴリズム、プラットフォームルールを用いて他社サービスの正常運用を妨害(強制リダイレクト、改変・クローズ誘導等)する行為を禁止しました。
また、プラットフォーム事業者には内部規則整備・是正義務などのガバナンス責務が課されます。
⑤相対的優越地位の濫用禁止の新設
支配的地位にいない場合でも、資金・技術・流通等の優位を使って中小企業に不合理な条件や支払遅延を強いる行為を禁止することが明記されました。
⑥執行強化
監督当局は代表者への事情聴取や期限付き是正を求め得るほか、調査妨害に対する過料、違反についての企業信用記録への記載等を規定しました。
【企業の留意点・実務上のポイント】
本改正を受け、企業側として対応すべき点をまとめました。
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検索広告/SEO/ASO:他社の著名標識をキーワード設定していないかの再点検
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レビュー運用:インセンティブレビューや“やらせ”の排除、ログの保存とリスク管理体制の構築
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反賄賂:値引・コミッションの開示・記帳ルール、従業員の贈賄推定への対応についてのルール整備、事前承認と証跡を残すことの徹底し、従業員個人への責任追及の可能性もあることも含めた教育
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プラットフォーム/アプリ運営:リダイレクトやクローズ誘導等の技術的手段の有無の確認、内部ルールや是正フローの整備
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取引実務:中小企業相手の取引について、支払サイトや不合理条項について必要な是正
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域外対応:海外拠点・委託先の発信/宣伝・比較広告も中国法リスクに対応するためのモニタリングの実施
主にマーケティング・法務・プラットフォーム運営・購買などの機能における本改正への影響を把握し、必要なルール整備やリスクマネジメントが必要となります。