2025年版:ミャンマー会社設立・進出形態①
  
Topic : Basic Information
Country : Myanmar

要約

  • 外資持分が35%以下の企業は「ミャンマー会社」扱い、36%以上は「外国会社」扱い。

  • 私会社(Private Limited Company)は株主1名・取締役1名で設立可能(少なくとも取締役1名は通常居住者)。

  • 公開会社(Public Limited Company)は取締役3名以上(うち1名はミャンマー国籍の通常居住者)。

  • 支店・駐在は、実務上**Overseas Corporation(海外法人)**としての登録が前提。

  • 法人税は原則22%(上場企業等の特例あり)。

  • CMP(委託加工)は免税インワード加工として運用され、輸入から原則1年以内の再輸出が必要(延長可)。

 


1. 現行法の基本枠組み

ミャンマーの会社は、外資比率により「ミャンマー会社(外国資本が35%以下)」と「外国会社(36%以上)」に区分されます。この区分は、土地の取扱いや特定業法の適用可否などに影響を与えます。
また、私会社では取締役が1名以上必要で、そのうち少なくとも1名は年間183日程度ミャンマーに通常居住していることが求められます。
一方、公開会社の場合は取締役が3名以上必要であり、そのうち1名はミャンマー国籍を有する通常居住者でなければなりません。

 


2. 会社形態の選択肢

ミャンマーでは主に「私会社(Private Limited Company)」と「公開会社(Public Limited Company)」の2つの形態があります。
私会社は株主が1名から50名までで構成され、取締役は1名以上必要です。そのうち1名は通常居住者である必要があります。株式の譲渡は定款によって制限されており、少人数で迅速に設立できるため、新規進出や中小規模の事業に適した形態です。
一方、公開会社は株主数に上限がなく、取締役は3名以上(うち1名はミャンマー国籍の通常居住者)で構成されます。株式の譲渡は原則として自由であり、資本調達や将来的な上場を見据えた事業形態に適しています。

 


3. 支店・駐在の取扱い(Overseas Corporation)

海外法人がミャンマーで収益活動を行う場合は、「Overseas Corporation」としての登録が必要です。
一方で、情報収集などの非収益活動を目的とする駐在形態については、法文上の明確な独立類型は限定的ですが、実務上は海外法人登録を行ったうえで収益活動を行わない形で運用することが一般的です。
また、銀行口座の開設、契約の締結、税務・会計報告などの際には、Overseas Corporationとしての登録が前提となるケースが多いため、留意が必要です。

 


4. 税制の概要

法人税(CIT)は原則として22%が適用されますが、上場企業は17%、油ガス探鉱などの特定業種は25%といった特例もあります。支店(Overseas Corporation)にも原則として同率が適用されます。
商業税(CT)は原則5%ですが、品目や役務によって例外が設けられています。
さらに、投資優遇制度(MIC認可)を受けた場合は、開発ゾーン区分に応じて3年・5年・7年の法人税免除や関税・商業税の免除などの優遇措置が適用されます。これには、対象業種・立地・認可などの要件を満たす必要があります。

 


5. CMP(委託加工:Cut–Make–Pack)

CMP制度とは、原材料や梱包材を免税で輸入し、国内で加工を行った後に完成品を再輸出する「インワード加工スキーム」です。
輸入申告日から原則1年以内に再輸出する必要があり、延長を行う場合は所定の手続きが求められます。
実務上は、残材や副産物の管理、原材料と製品のトレース、期限前の延長申請などを適切に行うためのコンプライアンス体制を整備することが重要です。

 


6. 設計上の主なリスクと対策

まず、持分比率の設計を誤ると、将来的に転換社債やワラント、ESOPなどの導入によって外資比率が35%を超えてしまうおそれがあります。そのため、資本設計段階で慎重な検証が必要です。
また、通常居住要件を忘れると、取締役の資格が満たされなくなるリスクがあります。取締役の入出国スケジュールと183日要件を年次計画に組み込むことが推奨されます。
さらに、駐在員の活動範囲が不明確な場合、見積提示や受注行為などが事業行為と評価されるリスクがあります。これを防ぐためには、社内規程で活動範囲を明確にしておくことが重要です。
最後に、CMP制度における期限超過を防ぐため、調達から生産・輸出までの工程をガントチャートなどで可視化し、延長申請のリマインドをシステム化することが有効です。

 


7. 類型比較(早見表)

項目 私会社(Private) 公開会社(Public)
株主 1〜50名 上限なし
取締役 1名以上(うち1名は通常居住) 3名以上(うち1名はミャンマー国籍の通常居住者)  
株式譲渡   制限あり(定款) 原則自由
外資区分 ≤35%:ミャンマー会社/≥36%:外国会社   同左

 

 

②に続く

Creater : 晃 渡辺