インドネシア政府は企業情報の透明性向上とガバナンス強化を目的として、オンライン許認可システムである OSS-RBA(Online Single Submission – Risk Based Approach:リスクベース事業許可制度) の機能改修を段階的に進めております。その結果、企業が OSS を利用する際の実務に大きな影響が生じる変更が複数導入されています。本ニュースレターでは、特に問い合わせが多い「役員情報の更新要求」と「株主変更時の自動通知・承認プロセス」の2点について、改定内容と背景をまとめてご案内いたします。
まず、2023〜2024年頃より多くの企業で、OSS 上にて 取締役(Direksi)およびコミサリス(Komisaris:監督役)情報の更新要求が表示されるケースが増えています。これは、企業情報を管理する法務人権省の法人データベース AHU(Administrasi Hukum Umum:法務一般管理システム) と OSS のデータ同期が強化されたことが主因です。AHU 上の法人情報と OSS 上の情報が一致しない場合、システムが自動的に更新を促す仕様へと変更されたためです。また、国際基準に基づき企業の最終的な支配者を把握する BO(Beneficial Owner:実質受益者) 管理が国家的に強化されていることも背景にあり、役員・所有者情報の適切な更新がこれまで以上に重要となっています。
次に、企業運営に直接影響する大きな変更として、2024年頃より 株主構成変更時の自動通知・承認プロセスが導入されています。OSS 上で株主情報を変更すると、既存株主全員へ自動的にメールが送信され、各株主が OSS へログインし承認操作を行わなければ、手続きが完了しない仕組みとなりました。この新機能は、株主間での無断の株式移転や情報不一致による紛争を防止し、企業の所有構造の透明性を確保することを目的としています。従来のように担当者が OSS で登録すれば完了する方式ではなく、株主全員による明示的な承認が必須となる点が大きな変更点です。
これらの制度変更はいずれも、インドネシア政府のデジタル統合政策および企業ガバナンス強化の方針に沿って実施されております。企業としては、OSS・AHU・公証人書類の情報が一致しているかを定期的に確認し、役員・株主変更時には事前に関係者との調整や承認体制の整備を行うことが重要です。OSS の仕様変更により、従来よりも慎重な管理が求められるため、今後の手続きにおいてご不明点がございましたら早めの確認をおすすめいたします。