2026年2月8日、インド中央直接税委員会(CBDT)は、2026年4月1日に施行予定の「所得税法2025」を具体化するための「所得税規則2026(案)」と新しい各種フォーム案を公表し、一般からの意見募集を開始しました。公表日から15日間のパブリックコメント期間が設けられ、締切は2026年2月22日です。草案は1962年制定の旧規則を全面的に見直し、条文数を511から333へ、フォーム数を399から190へ削減し、冗長な規定や重複項目を整理しました。
CBDTは草案の背景として「簡素化と自動化」を掲げており、明確で平易な言語を用い、計算式や表を活用して読みやすさと機械による照合を高めています。フォームは共通情報を標準化し、事前入力や自動照合が可能な構造となっているため、税務申告や監査の負担軽減が期待されます。草案は旧法の政策趣旨を維持しつつ、新法に合わせて用語や手続きを整理したもので、2026年4月1日に「所得税法2025」と同時に発効予定です。
規則案では、旧制度で認められていた従業員向け福利厚生(ペルクイズ)の扱いも整理されました。報道によれば、雇用者が従業員に贈る年間15,000ルピー以下のギフトや職場での無料の食事・軽食、医療費補助や利子のない借入(上限2万ルピー)、業務用ノートパソコン貸与など、旧制度で非課税だった特典は新規則でも維持される見通しです。さらに、RSMインド(TaxGuru)の解説では、自動車の貸与や食事券、教育費補助などの課税対象となる額が表形式で示され、自家用車の貸与に対する課税評価額が月額5,000〜7,000ルピーへ引き上げられるほか、雇用者からのギフト非課税枠が年間15,000ルピー、食事券は1食200ルピー、子ども1人当たりの教育費補助は月3,000ルピーまで拡大されるなどの変更が提案されています。税務監査用の新しいフォーム26も導入され、デジタル会計情報や国際取引、GSTとの連携など幅広い情報を一元的に報告する仕組みとなり、旧3CDフォームを置き換えます。
ポイント
- 実施スケジュール:草案は2月8日に公表され、2月22日まで意見を募集しています。採用された規則は2026年4月1日から施行され、新所得税法と同時に発効します。
- 規則・フォームの簡素化:条文数は511→333、フォームは399→190に削減し、重複規定を統合。計算式や表を採用し、事前入力や自動照合などIT化を意識した設計になっています。
- 旧制度の非課税特典の維持:雇用者から従業員へのギフト(年15,000ルピーまで)、職場での食事、医療費補助、利子のない借入(上限2万ルピー)、業務用機器貸与などは非課税扱いが継続される見込みです。
- ペルクイズ評価額の改定:草案では、自動車の貸与に対する課税評価額が月額5,000〜7,000ルピーに引き上げられ、ギフト非課税枠が15,000ルピー、食事券は1食200ルピー、子ども1人当たりの教育費補助は月3,000ルピーまで拡大されるなどの具体的な金額が示されています。
- 新フォーム26(監査報告書)の導入:新しいフォーム26では、デジタル会計システムの開示、国際税務や特定取引、TDS/TCSの分析、GSTとの整合などを網羅し、税務監査報告の範囲を拡大します。
- 最高裁の公開訴訟(PIL):2月10日、最高裁は新所得税法に含まれるコンピュータやクラウド空間の捜索権限について違憲性を問うPIL(公益訴訟)を審理すると発表しました。請願者は、税務当局が端末やクラウドデータを事前通知なしに捜索できる条項が過度に広いと主張しています。企業はデジタルデータ管理と法務対応の強化が求められます。
- SEBIの担保規制:2月5日、証券取引委員会(SEBI)は株式等の担保設定・実行に関する運用を改正する通達を発出しました。担保設定時には当事者がインド契約法の遵守を宣誓し、担保権実行の前には合理的な事前通知を求めるなど、手続きの厳格化が4月6日から適用されます。
- 登録評価人制度の改正案:2月2日には企業法規則の改正案が発表され、登録評価人機関(RVO)の最低払込資本金を250万ルピーと定める案が示されました。既存のRVOは2028年3月31日までに適合する必要があり、意見募集は3月5日までです。M&Aや資産評価に関わる企業は外部バリュエーション機関の選定基準に注意が必要です。
- ESIC Health Connectアプリの刷新:2月2日、従業員国営保険公社(ESIC)は医療予約や電子健康記録の閲覧ができるモバイルアプリ「ESIC Health Connect」を公開しました。新アプリはアドハール連携や在宅検体採取予約など機能を拡充し、現場での広報が求められています。
まとめ
今回の草案は、60年以上運用されてきた旧所得税規則を抜本的に改定し、デジタル時代に即したシンプルな税務枠組みへ移行する重要な局面です。日本企業にとっては、新規則が正式に採用される前に内容を精査し、疑問点や実務上の課題をコメントとして提出することが望まれます。特に駐在員向けの給与・福利厚生制度や本社経費配賦に関わる部分は、新しい評価基準に基づくコストシミュレーションや社内規程の見直しが必要です。税務監査に関してはフォーム26の導入に備え、会計システムとGST・TDS/TCSのデータ整合を進めるとともに、国際税務や移転価格に関する情報収集を強化しましょう。
また、最高裁のPIL審理は税務調査におけるデジタルデータの取扱いを巡る法的論点を浮き彫りにしており、企業はクラウドや端末のアクセス管理・ログ保存・社内規程を整理しておく必要があります。証券担保規制の改正や登録評価人制度の資本要件の見直しは、資金調達やM&A評価に影響を与える可能性があるため、該当する企業は当局通達を確認し、契約書や手続きを見直してください。ESICの新アプリは従業員の医療サービス利用を支援するツールであり、現地法人の総務部門は従業員への周知と利用促進を行うことが期待されます。
本日は以上になります。
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