シンガポールでは、政府・労組・雇用者団体の三者で構成される全国賃金評議会(National Wages Council:NWC)が、毎年賃金ガイドラインを公表し、当年度の賃金改定の方向性を示しています。最新のNWC 2025/2026ガイドラインは、適用期間を2025年12月1日から2026年11月30日とし、不透明な経済環境下においても賃金上昇を継続させつつ、生産性向上と両立させる方針を示しています。
今回のガイドラインで特に重視されているのが、低所得層(Low-wage workers)に対する持続的な賃上げです。総月給2,700シンガポールドル以下の従業員を対象に、企業の業績や先行きを踏まえ、総月給の5.5%から7.5%、または105~125シンガポールドルのいずれか高い方の基本給(built-in wage)引上げが推奨されています。
また、2025/2026ガイドラインでは、プラットフォーム労働者(配車・配送サービス従事者など)を対象に含める点が明確化されました。雇用形態の多様化が進む中、賃金改善の枠組みをより幅広い働き手に適用しようとする政府の姿勢が表れています。
制度面では、技能向上や生産性向上と連動した賃金体系であるProgressive Wage Model(PWM)の継続的な推進が掲げられています。単なる賃上げにとどまらず、職務設計の見直しや従業員のスキル開発と組み合わせた対応が企業に求められています。あわせて、賃上げに伴う企業負担を軽減するため、Progressive Wage Credit Scheme(PWCS)を通じて、一定期間、政府が賃金上昇分を共同負担する仕組みも維持されています。
日系企業の実務上は、低所得層に該当する従業員の把握、基本給と変動給の設計、PWM対象職種の確認、賃上げと業務効率化の同時実施が重要となります。NWCガイドラインは法的拘束力を持つものではありませんが、労使関係や採用競争力にも影響を与えるため、自社の賃金方針や人材戦略を点検する上で重要な指針となります。
参考文書
1. Ministry of Manpower (MOM), “NWC 2025/2026 Guidelines”
2. ジェトロ「シンガポール賃金ガイドライン(NWC)の概要」
3. Ministry of Manpower (MOM), “Progressive Wage Model (PWM)”
4. IRAS, “Progressive Wage Credit Scheme (PWCS)”
今回は「人材・賃金ガイドライン(NWC)最新動向(2025/2026)」について解説しました。
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※本記事は、シンガポールに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。