いつもWIKI-INVESTMENTの記事をお読みいただきありがとうございます!
今回は
【少しずつ変わっていく?シンガポールのAnnual Return(AR)の今!】というテーマで、お話していこうと思います。
少しずつ変わっていく?シンガポールのAnnual Return(AR)の今!
いつ、誰がどのようにして行うの?
まずは基本情報です。
ARはその名前の通り、年に一度(Annual)行う報告(Return)ですが、対象はシンガポールで活動する法人のうち、外国法人の駐在員事務所を除く全ての企業です。
管轄は会計企業規制庁ACRAで、シンガポールで収益を上げる法人はいずれもACRAに登記をする必要がありますが、
登記された法人はその登録が抹消されるまで、毎年必ずその財務状況を報告する義務があり、これがARと呼ばれているのです。
当然、報告すべき財務状況は正確なものである必要があり、一般的にはシンガポールで国家資格を有する会計監査人の監査を経た監査済み財務報告書(Audited Financial Statements)をベースに、指定のフォーマットでデータを作成して提出することになります。
また、そのフォーマットデータ(XBRLフォーマット)への変換、およびACRAへの提出は会社秘書役により行われ、
書類には会社を代表して取締役一名の署名が求められます。
どんな情報が記入されるの?
シンガポールでは、以下の情報をAR申告の際に記載することになります:
- 会社名
- 会社の種類(公開/非公開の別など)
- 会社の登記住所
- 会社役員情報(氏名、住所など)
- 株式情報(株式発行金額、株主情報)
- 財務状況(XBRLフォーマットにて)
- 年次株主総会AGMの日付
- その他(下記RORC、RFAを参照)
従って、各社はまず会計年度末までに財務諸表を整え、監査人にこれを提出して監査を受け、
監査済み財務報告書をもってAGMを開催し、それをもって会社秘書役に財務報告書のXBRLフォーマットへの変換とAR申告を依頼することになります。
それぞれの期限は以下の通りです:
- 監査+AGMの開催:会計年度末から6か月以内
- ARの申告:AGM開催から1か月以内
どんな目的で行われるの?
ARは一義的には財務状況の報告ですが、それは税務署IRASの管轄ではなく、ACRAが国内の企業情報を収集するのに役立てられています。
シンガポールは外資を呼び込んで国内の企業の統廃合を加速させ、優良な企業が高い生産性で経済を活性化させる、典型的な自由主義の理想を追い求めています。
従って、企業買収に用いられるデータとして、M&Aを活性化させる財務データには強い要求があります。
ACRAのポータルサイトBizFileで、ARを正確に行っている全てのシンガポール企業の情報がダウンロードできるのもこのためであり、
同時に透明な企業体制を確立させる目的も果たしています。
従って、会計基準の変更にも非常に敏感であり、企業がその価値を明示できる仕組みとして、ARが設けられていると言えます。
最近起きている変化とは?
上記目的に照らして重要になるのが、企業の運営実態の明確化です。
タックスヘイブンとして位置づけられ、ペーパーカンパニーの設立がひっきりなしに続くシンガポールでは、
例え銀行に大金を蓄え、その利益を積み重ねていたとしても、企業の実態が無人で、コントロールは全てシンガポール国外で行われている、ということは頻繁にあります。
そこで、重要になるのが意思決定者、すなわち取締役の存在と、ARを実行する自然人の存在です。
具体的には、2019年末に会計年度末を迎える法人から、登記されるべき実質的支配者のリスト(RORC:Registers of Registrable Controllers)として、
ペーパーカンパニーに典型的なNominee Directorの利用があるか否か、また企業の意思決定権を保持する人物の氏名と住所を明記するよう求められるようになりました。
更に、上記RORCの代わりにARを申告する実体として、登記上の申告代理人(RFA:Registered Filing Agent)が求められ、
会社秘書役の住所を記載することが求められるようになりました。
これらは直接的には企業の財務状況に影響を与えるものではありませんが、
ペーパーカンパニーの実態が外部からも容易に見通せる仕組みができてきたと言うことができます。
いずれにせよ、こうした横文字の連続に惑わされず、ACRAから求められるAR情報を、自社の情報として把握しておくことで、
AR申告の際にもスムーズに物事を進められることでしょう。
この記事に対するご質問・その他シンガポールに関する情報へのご質問等がございましたらお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。