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本日は、「バングラデシュにおけるセキュリティクリアランスの実態と課題」についてです。
1 セキュリティクリアランスとは何か
バングラデシュにおける「セキュリティクリアランス(Security Clearance)」とは、外国人がバングラデシュ国内で就労するにあたって、外国人就労者が国家安全保障上の懸念を有しないことを確認するための行政審査を指します。これは法令上の義務ではありませんが、実務上は、バングラデシュ投資開発庁(BIDA:Bangladesh Investment Development Authority)および警察当局(特別支部(SB)および国家保安情報局(NSI))のガイドラインに基づく行政上の要件として取り扱われています。
多くの場合、セキュリティクリアランスは就労ビザまたは就労許可の更新時に必要とされ、取得できない場合にはビザ手続が大幅に遅延し、または更新自体が困難となることがあります。
現在の制度枠組みは、2023年に導入されたBIDAガイドラインに基づいており、バングラデシュで就労するすべての外国人に適用されます。
2 セキュリティクリアランスに必要な書類
必要書類は雇用区分によって異なります。SBおよびNSIのチェックリストに基づく一般的な要件は以下のとおりです。
2-1. 民間企業に就労する外国人従業員
民間セクターに従事する外国人が最も一般的なケースであり、提出を求められる書類の量は他のカテゴリーと比較しても最も多いです。
なお政府案件に従事する場合は、民間雇用と同様の基本書類に加え、ビザ推薦状(Visa Recommendation)や税免除証明書(Tax Exemption Letter)が重点的に求められます。
2-2. 主な必要書類一覧(参照表)
会社登録関連書類に加えて、一般に以下の資料が必要とされます。
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No.
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書類名(英語表記)
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日本語表記
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1
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Appointment Letter
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採用通知書
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2
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Work Permit
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就労許可証
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3
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Visa Recommendation (BIDA/BEZA/BEPZA)
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ビザ推薦状(BIDA/BEZA/BEPZA発行)
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4
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Recommendation from the Company
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企業推薦状
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5
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TIN & Tax Certificate
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納税者番号・税務証明書
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6
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Photocopy of Passport & Visa
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パスポート・ビザの全ページの写し
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3 現場で発生している課題の詳細
3-1. 審査の長期化と手続きの不透明性
BIDAガイドラインでは処理期間は21営業日とされていますが、実務上は申請処理に数か月を要する場合もあり、ビザ更新に支障が生じることがあります。
3-2. SB/NSIによる追加チェック
2022年1月頃以降、SBおよび国家保安情報局(NSI)による現地確認の過程で、従来は問題視されてこなかった事項について予期しない指摘がなされる事例が急増しており、その結果、セキュリティクリアランスの発行が遅延するケースが増えています。実務上指摘されている主な事項は以下のとおりです。
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指摘内容
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実務上のリスク・影響
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申告給与額が低すぎる
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ワークパーミット自体が適正と認められなくなる恐れ
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個人銀行口座が未開設
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給与の正式な支払いルート不在とみなされる
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申告電話番号が現在不通
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本人確認・連絡が取れないとして審査停滞
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申告住所に居住実態が確認できない
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在留実態への疑義。賃貸契約書でも解決しないケースあり
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役職がバングラデシュ人でも担える業務
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外国人雇用の必要性そのものを否定され、ビザ更新不可に
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重要なのは、これらのチェックがBIDAの承認とは独立して行われるため、承認済みのワークパーミットであっても、クリアランス段階で却下され得るという制度的ギャップが生じている点です。
4 制度改革の動向
4-1. BIDA OSSポータルによる完全デジタル化(2025年10月1日施行)
これまでの課題に対応するため、バングラデシュ政府は2025年10月1日からセキュリティクリアランスの申請プロセスを完全にオンライン化することを決定しました。これにより、すべての外国人投資家および駐在員は、BIDAのワンストップサービスポータル経由での申請が義務化されることとなりました。
今後は、手続きの透明性向上や処理の迅速化が期待されるとともに、外国企業にとってより円滑な事業運営環境の整備につながることが期待されます。
企業および外国人従業員は、給与水準、個人銀行口座の開設状況、登録電話番号などについて、可能であれば専門家の助言を得ながら、事前に適切に整備しておくことが強く推奨されます。
主な指摘事項とその影響は以下のとおりです。
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指摘内容
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実務上のリスク・影響
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申告給与額が低すぎる
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ワークパーミット自体が適正と認められなくなる恐れ
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個人銀行口座が未開設
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給与の正式な支払いルート不在とみなされる
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申告電話番号が現在不通
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本人確認・連絡が取れないとして審査停滞
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申告住所に居住実態が確認できない
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在留実態への疑義。賃貸契約書でも解決しないケースあり
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役職がバングラデシュ人でも担える業務
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外国人雇用の必要性そのものを否定され、ビザ更新不可になる恐れ
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参考文書(あれば)
今回は「バングラデシュにおけるセキュリティクリアランスの実態と課題」について解説しました。
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※本記事は、バングラデシュに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。