ベトナム・ハノイ支部の小瀬です。
さて、2025年7月1日にベトナムの新労働組合法(Law No. 50/2024/QH15)が施行されました。 本改正は約10年ぶりとなる大幅なもので、日系企業を含むすべての企業にとって、労務リスク管理の観点から極めて重要な変更点が含まれており、速やかな社内体制の見直しが求められます。
以下に、特に重要と判断される主要な改正点をまとめましたので、ご確認ください。
外国人労働者の労働組合への加入資格
この改正により、外国人労働者の労働組合への加入が認められます。これは、ベトナムで12ヶ月以上の労働契約を結んでいる外国人従業員に適用されます。
企業は、外国人従業員に対し、労働組合に加入する権利があることを通知することを推奨します。(通知については法令上、明記されていませんが、労務リスクを軽減するため)
組合の設立および活動支援に関する使用者の義務の明確化
使用者は、労働組合の設立および活動を支援する義務が明示的に課されることになりました。これには、組合活動のために事務所スペース、備品、消耗品(コンピューターや机など)を無償で提供することが含まれます。
また、この法律は、労働時間中の組合活動のための時間休を保障しています。主要な非専従の組合役員は月24時間まで、その他の役員は月12時間まで組合業務に専念できます。使用者は、この時間に対して正規の賃金を支払う義務があります。
さらに、上部団体が招集する会議、会合、研修への出席も有給扱いとなります。企業は、組合役員に十分な活動時間を付与し、この時間を有給休暇として扱っていることを確認する必要があります。
加えて、この法律は、使用者による組合役員の不利益な解雇や人事異動を強く制限しています。現職の組合役員について、労働契約が満了した場合、組合役員としての任期が終了するまで契約を延長しなければなりません。
使用者が組合役員との労働契約を一方的に終了、解雇、または他の役職へ配置転換する場合には、上部労働組合(直属の監督労働組合)の事前の書面による同意が必要です。上部労働組合が同意しない場合、使用者は直ちに解雇などを進めることはできず、管轄の権限ある機関に報告する義務を負います。
不法に労働契約を終了させられたり、解雇されたりした場合、労働組合は監督当局に介入を要請したり、組合員に代わって訴訟を提起したりすることができます。
これは、企業が組合役員の人事上の処遇に細心の注意を払い、これらの処分を検討する際には事前に上部労働組合と協議し、手続きを厳格に遵守しなければならないことを意味します。
本報告は二回に分けて行い、今回は第一報となります。残りの改正点につきましては、追って第二報にてご報告いたします。
何か質問等ございましたら、ご質問いただけますと幸いです。