海外子会社の資金繰りの方法として、親子ローンがあげられると思います。
銀行借り入れという方法もありますが、ベトナムの場合は金利が高いため親子ローンを選択する企業様が多くなっています。
今回は親子ローンで必要になる手続きや注意点などを解説していきます。
〇短期ローンと中長期ローン
まず最初に検討する必要があるのはローン期間です。
ローン期間が1年以内の場合は短期借入となり、それを超える場合は中長期ローンという扱いになります。
どちらも借り入れ後、中央銀行への月次報告の必要があります。
相違点として、中長期ローンの場合は送金前に中央銀行へ借り入れ登録をする必要がある点です。登録をしていなければ送金が受け入れられない可能性がある点や受け入れられても将来的に罰則が発生すること中央銀行への登録に2~3カ月程度を要することに注意が必要です。
〇中長期ローンの注意点
前述の通り、中長期ローンの場合は事前に中央銀行への登録が必要となります。
その際、もう1点注意しなければならないのがIRC上の借入枠です。IRC上には「総投資額」と「資本金額」が記載されています。この差額(総投資額 ― 資本金額)が借り入れ可能な枠となります。借入金額がこの借入枠を超える場合はまずはIRCの総投資額の変更手続きを行う必要があります。その場合は追加で1~2カ月程度を要するため注意が必要です。
例)20,000USDの借り入れ予定だが借入枠が下記の場合
総投資額50,000USD ― 資本金額40,000USD = 借入枠10,000USD
→総投資額を60,000USD以上に変更する必要がある
〇その他注意点
短期と中長期を含めて、親子ローンの注意点としては以下が挙げられます。
・外国契約者税
利息に対して外国契約者税が発生します。
外国契約者税とは、ベトナム法人が外国法人からサービスを受ける際に発生する税金です。利息の支払いの際にこちらを申告納付する必要があります。
外国契約者税の申告納付期限は短く、支払いから10日以内となっています。特に頻繁に海外取引があるわけではない企業はこれを認識しておらず、申告漏れが発生するケースがありますので、注意が必要です。
また、外国契約者税を申告するにはCITやVAT等の際に使用する物とは別の専用の税コードを取得する必要があるため、注意が必要です。
・金利の決定
金利に関して、市場価格に比べて低すぎる場合中央銀行からの許可が下りない可能性があります。また、日本の税務署より指摘を受けるリスクもあります。
逆に高すぎる場合、ベトナムの税務当局より指摘を受ける可能性もあります。
できるだけ市場価格に近い利率で金利を決定することが好ましいかと思います。
・中央銀行への報告
前述の通り、短期と中長期どちらの場合でも中央銀行への月次報告が必要となります。以前は四半期報告でしたが、2022年11月より月次へと変更されています。報告は現在オンライン上での対応が可能となっています。
・初めての中長期ローン
初めて中長期ローンを行う場合は中央銀行への登録の前に中央銀行でのオンラインアカウントの取得が必要となります。そのため追加で2~3週間程必要となります。
〇親子ローンの返済ができない場合
どうしても親子ローンの返済ができない場合は下記のような対処方が挙げられます。
1,ローンの延長
ローン返済期間の延長を行います。
元の借り入れが短期ローンだった場合は中長期ローンへの移行のため中央銀行への登録が必要となります。
2,増資
親会社から増資をしてもらい、それを返済に充てます。
借入枠は前述の通り総投資額-資本金額となります。
3,ローンを資本金へ転換
貸し手側の同意を得た場合のみ、未返済のローンを資本金へ転換することが可能です。
その場合返済義務はなくなります。
本日は以上となります。
親子ローンや現地子会社の資金繰りに関してご相談等あればご連絡ください。