外資規制について Last Part
それでは、ベトナムの外資規制最後のパートになります。ここでは、「その他の規制分野」について紹介します。
〈土地所有に関する規制〉
ベトナムでは民法205条、憲法17条によってベトナムの土地は国民の共有・国有の財産であるとされています。またベトナムの国籍を有する個人・法人のみがこの土地の所有を認められるので、外国企業がベトナムに進出する際には政府から土地を貸借する形になります。もちろん使用料・賃貸料を政府に支払う必要があります。
〈借入に関する規制〉
外国企業が、ベトナム国内の銀行やベトナム国外の親会社から借入を行うことは可能ですが、その利用目的に規制があります。それぞれ詳しくみていきましょう。
・ベトナム国内で借入をする場合
前提として、借入期間は、投資ライセンスに基づいた事業の残存期間を超えることはできません。
- ベトナム国内銀行から借入をする際は、ドン建での借入が可能
- ベトナム国内の外資銀行からの借入の際は、ドンor外貨建のどちらも可能
ただし外貨建の場合、外貨収入を得ている企業のみ可能で、利用目的に制限が設けられます。借入申請時に、必ず担保もしくは保証書を提出する必要があり、ここでいう保証書とは売買契約書、インボイス、通関証明書等になります。利用目的の制限というのは、海外からの輸入・サービスに対する支払資金、ベトナムから外国への投資資金、対外債務の期限前返済資金などの用途に限られています。
・ベトナム国外から借入をする場合
一般的に親会社の関連会社から、運転資金等を補填するために親子ローンが行われます。このような借入の場合、その借入期間によって規制の内容が異なります。
1年以内の短期借入による資金は、経常口座に必ず入金しなければなりません。またその使用用途は、運転資金に限定され、また投資証明書に記載された事業分野の必要資金に限定されます。その場合ベトナム中央銀行への事前申請は不要となります。
借入期間が1年を超える場合、借入を行う度にベトナム中央銀行への事前申請が必要で、かつ契約署名日から30日以内で、借入金の送金前に借入・返済を登録した借入登録証を取得しなければなりません。
事前申請に必要な書類としては、申請書・投資証明書の写し・借入契約書の写しです。
〈主な注意点〉
- ベトナムで投資許可証を取得する際、親会社の実績が非常に重要になります。親会社の定款の事業目的に、ベトナムで行う予定の事業内容が記載されている必要があります。ただし以上を満たしていても、業種によって、親会社の実績を証明するため取引先との契約書・請求書の写しなどを当局より求められる可能性もあります。
- 流通分野(卸売・小売)に関しては、商務省令(10/2007/QD-BTM)によって2009年より100%外資での進出が可能になったにもかかわらず、投資許可証を取得するのが困難な状況にあります。特に2店舗目以降の開設許可についてはエコノミックニーズテスト(ENT)と呼ばれる審査を通過しなければならず、この審査に不透明な部分がかなりありました。しかし2013年の6月より施行された外国企業の商品売買活動のガイラインである通達(08/2013/TT-BCT)によって、500㎡未満の店舗がENTを受ける必要がなくなりました。
- 飲食店に関しては、2015年1月11日以降外資100%での投資に関する規制が撤廃されました。
- ベトナム国内で販売する際には、HSコード(輸出入統計品目番号)と呼ばれる商品コードの登録が必要となります。商務省令1380/QD-BCTにおいて、特にベトナムでの取得困難な品目を指定しています。
- 資本金の設定のない業種は原則自由に資本金を設定することが可能ですが、実務上はある程度資本金を用意する必要があります。例えば、輸入販売をする場合は、最低30万USドルほどの資本金を用意する必要があります。
以上が、その他の規制に関するご紹介になります。記載事項以外にもまだまだ複雑な点や、実務上発生しうる懸念点など多々あります。そういった部分は専門家に確認のうえ進めていくことをおすすめいたします。
外資規制に関して大きく4つの分野をご紹介させていただきました。ご購読ありがとうございました。