いつもWiki Investment をご覧いただきありがとうございます。
本日は、「 WPPF(従業員利益配分基金)」についてです。
- 概要
WPPFとは “Workers’ Profit Participation Fund” の略で、
バングラデシュ労働法(Bangladesh Labour Act 2006)で規定されている「従業員利益配分基金」 のことです。
企業が利益を上げた場合、純利益の5%を従業員に分配する必要があります。
実務上は、基本的に以下条件いずれかに当てはまる企業が対象となります。
- 払込資本金1,000万タカ以上
- 固定資産の価値2,000万タカ以上
政府官報による指定で他の企業も対象に含めることがあります。
輸出型・外資企業: 「100%輸出指向型産業」や「100%外貨投資型産業」では、政府官報や関係当局の決定により、各社ごとのWPPF設立義務が免除され、業界共通基金への拠出に置き換えられる場合があります。日本企業の場合、繊維・製造業で完全輸出型の場合はこの特例の対象となり得ます。
また、たとえ工場を持たなくても、上記資本金・資産条件を満たす現地法人(IT企業・商社の支店など)はWPPF対象です。支店や合弁会社も「会社」とみなされ、上記要件を満たせば適用対象です。特に支店の場合は、現地の固定資産額が資本金要件とみなされます。
製造業でもITサービス業でも基準は同じです。日本企業がテクノロジーや金融で進出した場合も、資産規模次第ではWPPF義務が生じる点に注意が必要です。
一方、情報収集のみ行う駐在員事務所は非営利活動のみ許可されるためWPPF対象外です。
- 基金設立のフローと注意点
STEP 1: 基金設立・管理体制
対象企業は 従業員利益参画基金(Workers’ Participation Fund)と 従業員福祉基金(Workers’ Welfare Fund)を設立します。両基金とも労働法に基づく恒久的基金です。
適用企業となってから原則1ヶ月以内に両基金を設置する必要があります。実務上は法人設立後速やかに手続きを行います。(労働法234条.a)
基金ごとに労使対等(労働者代表2名、経営者代表2名(1名は会計担当者)の理事会(Board of Trustees)を設置します。最初の議長は経営側から選出し、その後は両者から交互に議長を選びます。理事会は基金の運営管理を統括し、必要に応じて政府の指導を受けます。(労働法235条.1.a)
STEP 2: 拠出義務と拠出割合
事業年度終了後9ヶ月以内に、前年度の純利益の5%を基金に拠出します。拠出が遅れると理事会への命令や罰金が科されます。
拠出する5%は80:10:10の割合で分割され、80%が従業員利益参画基金、10%が従業員福祉基金、残り10%がバングラ労働者福祉財団(Bangladesh Workers Welfare Foundation)の基金へ拠出されます。
拠出金は全額会社負担で、従業員自身の負担はありません。たとえば日本企業の現地法人が5%=500万タカを拠出する場合、会社の費用として損金算入されます。
STEP 4: 受益者と利益配分
対象企業に9ヶ月以上勤務する全従業員が受益者となります。会社の経営者や出資者(取締役など)本人は受益者外です。
拠出された基金は、対象従業員へ均等に分配されます。管理・営業職やオフィスワーカーであっても同等の権利があり、毎年10月頃に当期分として一時金が支給されます。
法律上、毎年拠出金の3分の2は当期分として現金(報奨金)として支給し、3分の1は投資に回し、その投資収益も従業員に分配するよう定められています。たとえば拠出金150万タカなら100万タカを従業員に分配し、50万タカを投資に回します。
STEP 5: 監査・税務
WPPF・福祉基金ともに年1回の会計監査が義務付けられています。会計記録や拠出・分配状況を正確に保持し、認定会計士等による監査報告を行います。
WPPF・福祉基金への拠出金は、法人税の課税所得計算において損金算入できます。加えて、基金の運用収益や従業員への分配金は所得税が課されず免税扱いです。つまり会社にとって節税メリットがある反面、会計上・税務上の手続きが必須です。
違反時の罰則は厳格で、政府命令に従わない場合は会社命令が出され、それでも従わなければ役員・理事会メンバー個人に対して1回10万タカ+毎日5千タカの罰金が科せられます。日本企業の現地法人でも、担当役員が処罰対象となり得るため、期限・手順の厳守が不可欠です。
まとめ
日本企業の現地法人でも資本金・資産が基準値以上であればWPPF義務が発生します。特に現地通貨建てでの資本注入や本社負担のオフィス購入などで基準超えに注意が必要です。
また、100%輸出向け産業では共通基金制の適用が政府裁量で決まります。多くの繊維・縫製工場は輸出向けのため個別WPPF設立が見送られる場合がありますが、正式通知を要確認です。
加えて、オフィスワーカーもWPPFの対象です。コールセンターや庶務スタッフも含め、9ヶ月以上の社員は同等に利益配分を受けます。外注・派遣社員は契約上の雇用者が対象であり、本社(又は元請け)ではありません。
そして近年法令遵守が強化され、支払遅延や不備には企業のみならず管理責任者への厳罰が科されます。WPPF運営規程の整備、会計・税務処理は事前の準備が必要です。
今回は「WPPF(従業員利益配分基金)」について解説しました。
私たち「東京コンサルティングファーム」は、会計事務所を母体とした20ヵ国超に展開するグローバルコンサルティングファームです。
海外現地では日本人駐在員とローカルスタッフが常駐しており、また各拠点に会計士・税理士・弁護士など専門家チームが所属しているため、お客様の多様なニーズに寄り添った対応が可能です。
本稿に関するご相談はもちろん、海外進出から海外子会社管理、クロスボーダーM&A、事業戦略再構築など、海外進出に関する課題がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は、バングラデシュに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。