フィリピンの税金還付手続き:VATとCWTとは?
フィリピンでビジネスを展開する際、税金還付手続きの中でも、特に付加価値税(VAT)と源泉徴収税(CWT)の還付は、企業の資金繰りに大きく影響します。この記事では、フィリピンでの税金還付手続きについて、それぞれの税制を還付手続きのバックグラウンドを含めてわかりやすく解説します。
1.VAT制度とは?
VAT(Value Added Tax)は、フィリピン国内で提供される商品やサービスに課される12%の間接税です。これは、日本の消費税に類似しており、最終消費者が負担しますが、企業が徴収し納付する義務があります。
登録要件として、年間総売上が300万ペソを超える企業や個人事業主は、フィリピン内国歳入庁(BIR)にVAT登録を行う必要があります。
計算方法は、仕入れ時に支払うインプットVATと販売時に受け取るアウトプットVATを相殺し、その差額を納付します。例えば、100ペソの商品を仕入れた際には12ペソのインプットVATを支払い、200ペソで販売する際には24ペソのアウトプットVATを受け取ります。この場合、納付額は12ペソとなります。
非課税取引においては、年間売上が1,919,500ペソ未満のサービスや公共サービスなどは非課税です。また、輸出取引や国際運輸サービスも免除対象です。
2.CWT制度とは?
CWT(Creditable Withholding Tax)は、オフィス賃料や専門家報酬などに対して課される源泉徴収税です。サービスを受けた側が代金支払い時に前払税金としてBIRに支払います。これは法人税額計算時に控除可能な税金であり、企業のキャッシュフロー管理に重要な役割を果たします。
還付手続きについて、CWTは将来の法人税額との相殺が可能であり、還付申請もできますが、手続きが煩雑で時間がかかるため、多くの企業は無期限繰越を選択しています。
3.還付手続きの背景
フィリピンでは、制度上はVATとCWTの還付が認められていますが、実務上は以下の理由から還付手続きを行わないケースが多いです。
・無期限繰越: インプットVATとCWTは将来のアウトプットVATや法人税額と相殺できるため、急いで還付を受ける必要がない場合があります。
・手続きの煩雑さ: 還付申請は複雑で時間がかかり、多くの案件が保留されることがあります。
・不透明なプロセス: 明確な理由なしに還付金額が減額または否認されるケースもあります。
・追加コスト: 還付申請には税務調査が伴い、対応費用や税務裁判所への控訴費用などが発生する可能性があります。
4.最近の改善動向
2018年以降、フィリピン政府はBIRによる税金還付システムの改善を進めています。例えば、BIR通達(RMO No.25-2019)では、新しいVAT還付制度において処理期間が120日から90日に短縮されました。この制度では、75日間で申請内容を検証・承認し、その後15日間で還付を実施します。
5.企業への影響と対策
企業は、還付申請を行うか無期限繰越を選択する際に慎重な判断が求められます。特に、長期的な資金計画や税務リスクを考慮しつつ、専門家のアドバイスを受けることを推奨します。
6.フィリピンビジネスのことは「東京コンサルティングファーム」にお任せください
今回は「フィリピンの税金還付手続き」について解説しました。
私たち「東京コンサルティングファーム」は、会計事務所を母体とした20ヵ国超に展開するグローバルコンサルティングファームです。
海外現地では日本人駐在員とローカルスタッフが常駐しており、また各拠点に会計士・税理士・弁護士など専門家チームが所属しているため、お客様の多様なニーズに寄り添った対応が可能です。
本稿で解説した、フィリピンの税金還付手続きに関するご相談はもちろん、海外進出から海外子会社管理、クロスボーダーM&A、事業戦略再構築など、海外進出に関する課題がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は、フィリピンに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません