近年、タイに進出している日系企業も、
ローカル企業との商流を、よりローカライゼーションという観点で考えていかないといけない中、
貸倒懸念債権に関しての相談が増えてきております。
そんな中で貸倒懸念の債権の取り扱い方に関してまとめましたのでご参考にしてください。
(税務上の損金算入要件も含めて下記手順が必要)
1.20万THB以下の債権の場合
経済的合理性も含めて、裁判所を通して回収しても
回収額とかかる費用が同様程度と見做されるため、
債権者に対して会社から適切にフォローや催促などをしている
履歴があれば、貸倒損失として税務上損金算入も可能な額となります。
そのため、20万THB以下で懸念がある場合は、基本裁判所などは通さずに、
最終通知としても弁護士のサイン付きの書面などで行い、
それでも回収できない場合は、損失計上、
今後のためも考えて裁判を行うのであれば弁護士を通して裁判所に
申し立ては可能となります。(ただし、実務上はあまり行いません)
2.20万THB超~2百万THB
(1)
支払い請求且つ、支払い催促が企業から適切になされているが、
下記の理由で債権回収が不可能な場合、貸倒損失計上が可能です。
A)債務者が死亡したか、または失踪宣告がなされた場合、
かつ、その債務者には支払いに当てる財産がない状態。
B)債務者は事業を停止しており、かつ先取り特権のある他の債権者が持つ債権(貸付している銀行等)が、
債務者が所有する財産よりも大きい状態。
この場合は、A及びBの理由が明確になっている場合は、
社内文書及び証憑等を残して置き、貸倒損失計上は可能です。
(実質回収不可能)
(2)
債権者が債務者に対して、
支払請求にかかる民事訴訟の提起を裁判所を通して行い、
裁判所がその訴えを認め、訴えを受理したか、
または他の債権者がすでに提起した訴訟において、
すでに支払請求(資金の配分請求)がなされ
裁判所がそれを受理した場合。
(3)
債権者が破産申し建てを行い、
裁判所が破産請求を受託した場合。
※上記、(2)または(3)の場合に関しては、
該当年度の期末日から30日以内に貸倒償却の社内承認をとっている書面を
残しておく必要があるので留意が必要です。
また、(2)、(3)の場合で、外国で行われた訴訟・申請等の場合、
その国の法務当局によって発行された訴訟等の証拠書類がなければならず、
またその証拠書類はタイ外務省の規定に従って
タイ語への翻訳証明をされていなければなりません。
3.2百万THB~
(1)は上記2の(1)と同様。
(2)に関しては、民事裁判後、裁判所によって執行令状が発出され、
執行人のレポート上では、強制執行が行われた旨が記載されているが、
債務者には既に支払いを行うための十分な財産がない状態が
明確となっている場合。
(3)は上記2の(3)と同様。
となります。
そのため、2,3の場合は、額によっては、
弁護士を通して、民事裁判を起こし、裁判所からのレターに応じて、
税務上も処理できる形とはなります。
ただし、今回は(1)の(A)に該当するケースに近いかと考えられるため、
裁判を起こさずとも当該内容に関する該当する事象として、
証憑等を社内で残しておき、処理することも可能です。
また、回収の見込みがある場合は、民事裁判をおこし、
執行人による資産取り押さえまで進めることは可能ですが、
1年以上は通常少なくともかかる見込みとなります。