要約
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ミャンマーの社会保障は2012年社会保障法と2014年規則に基づき、社会保険(SSB)が中核です。
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常用労働者5名以上の事業所は、原則としてSSBへの加入義務があります。
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保険料は雇用主3%、被保険者2%(合計5%)で、賃金に月30万MMKの上限が設けられています。
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傷病給付は平均賃金の60%で最長26週間、出産給付は原則14週間・70%が目安です。
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遺族給付は拠出月数に応じて平均月賃金の30~80倍を基準に一時金等で支給されます。
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SSB適用の労働災害はSSBの業務災害保険で、適用外はWorkmen’s Compensation Act(WCA)が補償の拠り所になります。
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外貨建て賃金の取り扱いは規則で換算方法が定められ、実務では計算通貨や為替時点の明確化が重要です。
制度の全体像
ミャンマーの社会保障制度は、2012年社会保障法と2014年社会保障規則に基づく社会保険(Social Security Board:SSB)が中心的な役割を担っています。企業が常用労働者を5名以上雇用する場合、原則としてSSBへの加入が義務付けられており、健康・社会ケア保険と業務災害保険を通じて、医療、休業補償、出産、障害、遺族などの給付が提供されます。外国人も賃金を受ける被用者であれば適用対象に含まれ、給与が外貨建ての場合は規則に従って換算して取り扱います。
加入と拠出(保険料)
SSBの拠出は賃金を基礎に雇用主3%、被保険者2%の合計5%で計算されます。拠出の対象となる賃金には月額30万MMKの上限があり、上限超の部分は保険料計算に含めません。標準的にはMMK建てで拠出しますが、外貨建て賃金者については規則に基づいて換算します。実務では、社内規程により計算通貨、為替レートの適用時点、端数処理の方法を明確にしておくと、月次計算や監査対応が円滑になります。
主な給付(現行制度の考え方)
まず、医療・傷病では、SSBの医療施設や指定医療機関での現物給付に加え、就労不能時には平均賃金の60%を上限26週間まで支給する仕組みがあります。給付を受けるには、一定の拠出実績や医師の証明などが必要になります。
出産(Maternity/Paternity)については、母体には産前6週間と産後8週間の計14週間の休業が認められ、期間中は平均賃金の70%が支給されます。多胎の場合などは延長の運用が想定され、出生に伴う一時金(maternity grant)も用意されています。父親には最長15日のパタニティ休暇があり、こちらも平均賃金の**70%**が給付の目安です。
遺族・死亡関連では、被保険者が死亡した際に、拠出の通算月数に応じて、平均月賃金の30倍から80倍を基準とした一時金や分割の支給が行われます。従来の固定額ベースの記載は現行制度と一致しないため、現在はこの倍率方式に基づく運用が前提となります。
失業、老齢、障害については、2012年法に基づいて制度が規定されており、拠出月数や平均賃金を基にした給付の枠組みが整えられています。詳細な算定や開始時期は通達等によるため、適用時には最新の実施状況を確認しながら運用することが望ましいです。
業務災害(SSB)とWCAの関係
業務災害に関しては、SSB適用の被保険者であれば、医療、休業補償(原則60%)、障害・遺族給付を含むSSBの業務災害保険でカバーされます。一方で、SSBの適用外(たとえば5名未満の事業所や未登録事業所等)の労働者には、現在もWorkmen’s Compensation Act(1923/1924)が適用されます。企業は自社の適用区分をまず正確に把握し、SSBとWCAのどちらの枠組みで補償するのかを明確にして、就業規則や雇用契約書に反映しておく必要があります。
④に続く