移転価格調査ガイドラインについて
  
Topic : Labor
Country : Philippines

 

近年、ベトナム・タイなどASEAN諸国で移転価格税制の規制が厳しくなる中、まずはフィリピンでの移転価格に関する現状を振返ってみます。

・2013年1月に出された移転価格ガイドライン(Revenue Regulation No.2-2013)で文書化義務が規定。

・当該ガイドライン上では、国外関連者だけでなく、国内関連者も対象と記載されるが、関連者の定義は、支配関係の有無(出資割合、経営の管理・支配)であり、明確な数値基準は規定されていない。

・事前確認制度(APA)など具体的なガイドライン不透明な状況が続いている。

・毎年、法定監査の期限(年度末から3か月と15日)以内に移転価格の書類を更新するという同時文書化の規定があるが、これをしなくても罰金はない。

・BIRの調査が入った場合には、関連者間取引について合理的な説明ができず、罰金を払うことになるリスクはあるが、その調査もこれまで実施されていない。

結果として、移転価格調査など具体的なガイドラインはその後長らく公表されず、現在に至るまで調査が本格的に行われていない状況が続いていました訳ですが、今回、ようやく移転価格調査ガイドラインが公表されたという流れになります。

当該ガイドラインの目的としては、BIR担当官に対して納税者と関連者との間の取引について標準的な手続きと手法を定め、BIR内での移転価格に係る調査の質を担保すべく、調査ガイドラインのプロセスが明記した形になります。

当該移転価格調査のプロセスは、3段階あると記載されています。

準備段階フェーズ
BIR担当官が納税者に対して関連者間取引に関する情報や書類を要求するほか、必要に応じ て納税者とのミーティングを行うことを規定。

調査実施フェーズ
BIR担当官が納税者の事業の状況に応じた最適な移転価格算定方法を選択し、独立企業間価格の算定することを規定。

レポート作成フェーズ
分析結果を踏まえ、BIR担当官は移転価格調査レポートの作成を行う。また、レポート最終化の前に全ての指摘事項について、納税者とディスカッションを行うべきことが規定。

なお、準備段階フェーズにおいては、BIRは納税者に対して、書面により以下の情報を要求できることも規定されており、納税者はBIRからの要求に従い、下記 a-f のデータを提出する必要があります。

提出期限については調査ガイドラインに記載がなく、通常の税務調査を念頭に置くとレター受領日から5~15営業日以内が想定されます。

関連者間の取引(Annex 3)
財務諸表のセグメント情報(Annex 4)
サプライチェーン管理分析(Annex 5)
機能・資産・リスク分析(”FAR Analysis” Annex 6)
事業の特性(Annex 7)
比較可能性分析のデータ(Annex 8)


*a-e についてはテンプレートがAnnexとして公開されており、納税者はテンプレートに必要情報を記載する形式

企業側では今後、移転価格調査が本格化することを見込んで、以下の対応が必要になると想定されます。

・調査ガイドラインを念頭に移転価格ポリシーやドキュメンテーションなどの資料準備

・一般の税務調査の枠内で移転価格調査が実施されることが想定され、不合理な指摘と長期化リスクに対する税務調査プロセス全体の把握と対策

今後、BIRの一般的な税務調査が引き続き頻繁に実施される中で、移転価格調査がどこまで実際に行われるのか、今後のBIRの動向を注視していく必要がありそうです。

 

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最後までお読みいただきありがとうございました。

Creater : Masayuki Mukaiyama