こんにちは、ベトナム、ハノイ支部の小瀬です。
人事労務管理において、最も慎重な対応、そして法的リスクへの配慮が求められるのが「労働契約の解除(解雇)」です。
特に、使用者(企業)側からの契約解除は、労働者側からの辞職と比較して、法律により非常に厳しい制約が課されています。
本日は、使用者が労働契約を一方的に解除するための「法定事由」および「通知期間」を解説するとともに、実務運用における重要な留意点についてお伝えします。
1. 労働者と使用者の権利の「非対称性」
まず認識すべきは、契約解除における双方の権利の大きな違いです。
- 労働者: 理由の提示は不要。法定期限内に通知するだけで解除可能。
- 使用者: 「法律で定められた正当な理由」があり、かつ「適切な通知期間」を経た場合のみ解除可能。
2. 使用者が一方的に契約解除できる7つのケース(労働法第36条第1項)
使用者は、以下のいずれかの事由に該当する場合に限り、一方的な契約解除が認められます。
- 業務遂行能力の不足
- 就業規則等の評価基準に基づき、繰り返し業務を遂行しない場合。
- 要件: 評価基準は、労働組合(ある場合)の意見を聴取した上で公表されたものでなければなりません。
- 長期の傷病・事故
- 治療を受けても一定期間(無期契約で12ヶ月、有期契約で6ヶ月等)労働能力が回復しない場合。
- ※回復した場合は、雇用の継続を検討する必要があります。
- 不可抗力による縮小
- 天災、火災、伝染病、または国の要請等により、あらゆる救済措置を講じてもなお人員削減が避けられない場合。
- 職場復帰の拒否
- 定年退職
- 無断欠勤
- 正当な理由なく、連続して5営業日以上欠勤した場合。
- 採用時の虚偽申告
- 学歴や資格など、採用に影響を与える重要情報について虚偽の提供があった場合。
3. 遵守すべき通知期間
解除事由に該当する場合でも、原則として以下の事前通知が必要です。
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労働契約の種類
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通知期間
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無期労働契約
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少なくとも 45日前
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12ヶ月〜36ヶ月の有期契約
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少なくとも 30日前
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12ヶ月未満の有期契約
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少なくとも 3日前
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【例外】通知が不要なケース
以下の2つのケースでは、事前通知なしに解除手続きを進めることが可能です。
- 上記 4. (職場復帰の拒否)
- 上記 6. (5営業日以上の無断欠勤)
4. 【最重要】実務運用における留意点
ここまで法的な要件をご説明しましたが、実務上の現実はより複雑です。
「上記の法的要件を満たしていても、労働者を解雇するのは非常に難しい」のが実情です。
今回ご紹介した条項は、あくまで「法令上の最低ライン(形式的要件)」に過ぎません。実際の運用においては、以下のようなリスクが常に伴います。
客観的かつ公正な評価が行われたか、改善の機会を与えたか等、裁判所や当局は労働者保護の観点から非常に厳格に審査します。
通知のタイミングや組合との協議プロセスにわずかでも不備があれば、不当解雇とみなされるリスクがあります。
安易な契約解除は、後の訴訟リスクに発展する可能性がございます。
解雇や契約解除をご検討される際は、必ず実行に移す前に個別のケースごとに専門家ご相談いただけますよう強く推奨いたします。
何か質問等ございましたら、ご質問いただけますと幸いです。