要約
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2010年代以降に主要法が置き換わり、賃金支払・最低賃金・社会保障・商店事業所の各法が現行枠組みに更新されています。
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賃金は2016年法により現地通貨または中央銀行が認める外貨で支払え、月給は期末(大規模事業所は期末から5日以内)までに支払います。
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全国最低賃金は2018年の4,800MMKから段階的に引き上げられ、2025年10月14日以降は日額7,800MMK(8時間)です。
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週所定は商店・事業所で48時間、工場で原則44時間(連続操業は48時間)で、残業は原則週12時間(特例16時間)までが運用目安です。
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年休は通年勤務で10日、病気休暇は年30日、臨時休暇は年6日、週1日の有給休日と祝祭日の有給付与が基本です。
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社会保障は2012年法により、一般基金が事業主3%・被用者2%、労災基金が事業主1%の拠出です(いずれも上限賃金あり)。
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標準雇用契約は2017年様式での締結・署名・所轄労務事務所への提出が実務上の要件です。
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退職補償は2015年のスケジュールに基づいて勤続年数に応じて算定します(例:6か月以上1年未満は0.5か月、25年以上は13か月)。
主要改正の全体像
賃金支払については1936年法が2016年法に置き換わり、支払い通貨や期日、控除の上限などが明文化されました。最低賃金は1949年法から2013年法へ移行し、全国一律の最低賃金が段階的に引き上げられています。商店・事業所の就労に関する基準は2016年法が現行で、残業上限や深夜時間帯の扱いが明確化されました。社会保障は1954年法から2012年法に更新され、保険料率と給付体系が再設計されています。さらに、2017年の通知により標準雇用契約の様式と提出手続きが整えられ、解雇や補償金は2015年のスケジュールに基づいて運用するのが実務です。
労働時間・休憩・残業
商店・事業所における所定労働時間は1日8時間・週48時間で、連続4時間ごとに30分以上の休憩を与えます。工場では原則として週44時間が上限で、連続操業の場合は週48時間までとされています。残業は商店・事業所で原則週12時間までが目安となり、事情により16時間まで拡張できる場合があります。工場で残業を命じる際は、所轄当局の事前承認を得るのが原則です。割増賃金は通常2倍相当が運用上の基準となり、週休日や祝祭日に就業した場合は同様の割増か代休付与で調整します。深夜0時をまたぐ勤務は基本的に避けるべき運用です。
休日・休暇
週1日の有給休日を付与し、政府が毎年告示する祝祭日は有給として取り扱います。年次有給休暇は12か月の継続勤務を満たした労働者に年10日を付与します。臨時休暇は個人的な急用等に対して年6日を上限とし、病気休暇は年30日まで付与します。母性保護に関しては産前6週間と産後8週間を基本とし、父性休暇は社会保険の被保険者に対して15日が付与されます(多胎などの事情がある場合は延長があり得ます)。
賃金の支払い(2016年法)
賃金はミャンマー・チャットまたは中央銀行が認める外貨で支払うことができます。支払い方法は現金、小切手、銀行振込が認められています。月給は原則として賃金期間の末日に支払いますが、従業員数が多い事業場では期間末から5日以内に支払うことができます。雇用終了時は2日以内に清算するのが原則です。控除は法定項目に限られ、総控除額が賃金の半分を超えないように運用します。
最低賃金の推移と現行水準
全国一律の最低賃金は、2018年5月に日額4,800MMK(8時間)に設定され、その後の物価動向等を踏まえて改定が続きました。2024年8月からは6,800MMKとなり、最新では2025年10月14日以降に7,800MMKが適用されています。事業所は、所定内労働8時間に対してこの日額以上を確保し、時間給換算やシフト形態の違いがある場合も不利益が生じないように就業規則と賃金規程を整備します。
社会保障(2012年法)
社会保障制度は一般保健社会ケア基金と労働災害保険を中心に構成されています。一般基金の拠出は事業主が3%、被用者が2%で、対象賃金には上限が設けられています。労働災害保険は事業主が1%を拠出します。被保険者は疾病、出産、傷病、遺族などの給付を受けられますので、加入・資格管理・拠出計算・月次報告の体制を社内で確立しておくことが重要です。
雇用契約と当局への手続き
雇用契約は2017年の標準様式に沿って作成し、雇用主と労働者の双方が署名した上で、所轄の郡・区労務事務所に提出して登録します。契約書には労働時間、休日・休暇、時間外勤務、賃金の支払い、労働災害発生時の補償、社会保障給付の取扱いなどの必須事項を明記します。外資系事業所や多拠点運営の企業は、英語版とミャンマー語版の併記と、規程類(就業規則・賃金規程)との整合性をあらかじめ確認しておくと、監督対応が円滑になります。
解雇・退職補償金(Severance Pay)
就業規則や契約で定めた懲戒事由に該当し、警告手続を踏んだうえでの懲戒解雇は補償金の支払い対象外となる場合があります。一方、雇用主都合の解雇や整理解雇では、少なくとも1か月前の予告を基本とし、2015年のスケジュールに基づいて勤続年数に応じた退職補償金を支払います。具体的には、6か月以上1年未満で0.5か月、1年以上2年未満で1か月、2年以上3年未満で1.5か月、3年以上4年未満で3か月、4年以上6年未満で4か月、6年以上8年未満で5か月、8年以上10年未満で6か月、10年以上20年未満で8か月、20年以上25年未満で10か月、25年以上で13か月を基本給を基礎として支払います。日給者や出来高払の従業員に対しては、平均賃金の算定期間を明示したうえで同等の基準に準じて計算します。無断欠勤や無断退職は懲戒解雇の対象となり得るため、欠勤連絡や退職手続きのフローを社内規程で明確にしておくことをおすすめします。
③に続く