2022年5月15日以降、ついに、下記の3つのこと、
1)事前健康申告、2)新型コロナウイルスの陰性証明書、3)ワクチン接種証明書、これらの準備が不要となりました。
やっと、パスポートだけあれば自由に入国できます。
4月頃の情報ですと、約10万人超の入国者がいたようですが、その中でも約4%程度しか日本人が入国していないようでした。この日本人の渡航人数が伸びなかった理由の1つとして、ベトナムの規制が緩くなってもまだ日本の規制が残っているため、渡航を控えている、ということがあるかもしれません。
さて、今回の本題は、入国というよりは、入国前に個人所得税の申告や納税のリスクがあることを忘れてビザを取って入国してきてしまうことも多々あるので、この点の補足事項を共有させていただきます。
ご質問などございましたらお問い合わせ下さい。
■ 目次
1. 税務基本概要
2. 失敗事例
3. その他留意点
■ 税務基本概要
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項目
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居住者
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非居住者
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課税区分
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全世界所得
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ベトナム国内所得
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課税年度
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暦年(1月1日~12月31日)※入国初年度のみ、入国日から1年
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申告・納付
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◆月次:月末から20日以内
◆四半期:四半期末の次の月末まで(4月、7月、10月、1月)
◆年次:3月末まで(会社としての申告)
4月末まで(主に外国人個人)
※月次か四半期かは、会社の状況や規模などによって異なります。
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確定申告の必要有無
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✓
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不要
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所得税控除
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基礎控除:1,100万ドン/1ヶ月、13,200万ドン/年間
扶養控除:440万ドン/1ヶ月、5,280万ドン/年間
寄付金控除:支払額(政府認定の団体等に対する寄附のみ)
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税率
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累進課税
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20%
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主な法令:Law on Personal Income Tax, Decree 65/2013, Circular 111/2013
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法令
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発行元
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主な内容
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Law
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National Assembly
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基本的な規制
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Decree
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Government
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詳細の規定
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Circular
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Ministry
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実務方針
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Decision
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Prime Minister
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実務方針の詳細規程や
その他特別な取り扱い
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Official Letter
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Administrative Office
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特定の実務上の取り扱い
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▼居住性の判定について
主に183日以上いたかどうかで判断しますが、その他に、ベトナム国内に定常的な住居を有するか否かで判断され、外国人の場合、公安によって発行される居住証明もしくは、一時的居住証明に記載されている恒久的住所があるかどうかでも判断されます。
さらに賃貸契約等によって、居住者かどうかも判断され、これらはホテル、賃貸住宅、事務所などがあり、賃貸契約が個人で直接締結されているのか、もしくは法人名義で締結されているのかを問わないとされています。
▼課税年度が被ることについて
入国から2年目の時、初めて入国した日からの1年間と、2年目の暦年が被ることがあります。その場合、ベトナムの居住者か非居住者なのかによりますが、課税期間が重複した分(=2重課税になっている部分)を控除が可能な場合があります。初年度、暦年で183日以上ベトナムに滞在した居住者の場合、外国で支払った所得税に関してベトナム側で控除が可能になっています。一方で、初年度183日未満であり、ベトナム非居住者であった場合、重複期間の所得税の控除が可能になっています。
▼納税のタイミングについて
①VAT(付加価値税)を月次での申告、納税を行っている場合、給与を支給する組織は源泉徴収に対して月次での申告納税を行う必要があります。
▼累進課税率
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年間課税所得
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月間課税所得
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税率
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6,000,000
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5,000,000
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5%
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6,000,000 - 12,000,000
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5,000,000 - 10,000,000
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10%
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12,000,000 - 21,600,000
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10,000,000 - 18,000,000
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15%
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21,600,000 – 38,400,000
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18,000,000 – 32,000,000
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20%
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38,400,000 – 62,400,000
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32,000,000 – 52,000,000
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25%
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62,400,000 – 96,000,000
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52,000,000 – 80,000,000
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30%
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96,000,000 -
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80,000,000 -
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35%
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▼短期滞在者免税申請
日越二重課税防止協定によれば、下記の条件を満たせば免税が可能です。
◆条件
・暦年内におけるベトナム国内の滞在期間が合計183日以下である。
・ベトナム国内滞在者への給与は、ベトナム法人またはベトナム国内の恒久的施設からは支払われていない。
・ベトナム国内滞在者への給与の負担も、ベトナム法人またはベトナム国内の恒久的施設により行われていない。
しかし、申請はできるのですが、税務署からのお墨付きをもらえるわけではありません。それによって納税が免れているのかどうかを証明しづらく、不安要素が残るのが懸念点です。また、申請完了以前に、何らかの申請書類の受理を拒否され、書類が受け取られたとしても将来的に行われる税務調査において、免税条件を満たしてないので課税しますということを言われるリスクもあるので、短期滞在者免税制度の利用について、どうするかは、お客様のご判断に委ねられます。
■ 失敗事例
1) ベトナム事務所から商用ビザを発行して、出張者を複数招聘しており、この出張者に関する個人所得税の申告や納税を忘れていたこと。
➡商用ビザを発行して入国すること自体は問題ありません。ただし、商用ビザを発行するということは、ベトナムへ出張し、勤務をしていると書面上で示すことになるので、ベトナムでの個人所得税の納税をすることを忘れてはなりません。のちに来る税務調査にて、商用ビザの発行履歴から申告漏れや未納が発覚することもありますので注意が必要です。
2) ベトナム法人設立前に、ベトナム現地の自社の駐在員事務所から商用ビザを取って渡航しており、法人設立後に入国して、そのまま駐在していたこと。
➡外国人の場合、暦年で商用目的で何日滞在していたかを確認されますので、駐在員事務所でもビザを取って入国していた場合、その分の申告はできているか確認しておく必要があります。
3) 税コードを取得していなくて、納税が遅れてしまったこと。
➡個人所得税の納税コードを取得しておく必要があります。すでに持っている人はそれを使用することができますが、まだ持ってない人は、事前に取得しておきましょう。
■ その他留意点
▼個人所得税コード取得~オンライン申告の登録について
取得スケジュールとしては、必要書類をそろえて申請し結果を得るまでに、大体1~2週間くらいです。現在、省によってはオンライン申告を強制しています。これを返せば省によっては強制していないということですが、今後、国として統一するべく、どこの省でもオンライン申告が進められていくはずですので、今後のとこを考えると先にオンライン申告をしておくべきです。
オンライン申告に対応する為、事前にアカウントの登録を行う必要があります。ケータイの電話番号を登録する必要があり、すでにあるケータイのSIMを使うか、納税用に新しいSIMを購入することを検討が必要です。申告準備をすると、このケータイの番号宛に、SMSに認証コードが届くようになっており、有効期限が1分以内ということもあるので、申告する本人のケータイ電話を、個人所得税申告のタイミングでリアルタイムでチェックできる体制にしておく必要があります。また、記載言語がすべてベトナム語なので言語で不安な場合はベトナム人スタッフに任せることを検討する必要があるでしょう。
◆オンライン申告の流れ
1) 納税の準備
2)税務局より登録された携帯電話番号(SIM)へ認証コードが送付される
3)認証コードを用いて個人所得税を申告
▼主に課税される手当について
段々、課税されるものも増えているようですが、主に課税されるものを紹介していきます。
例)
・家賃手当
・水道光熱費、住宅管理費
・健康診断費用※1
・駐在員の一時帰国の航空券代※2
・駐在員の帰任時の引越手当、着任後の引越手当※3
・駐在員の私用で使用するレンタカーの費用
・就業規則やその他社内規定で定めた水準を超えた分の出張手当
・ビザ・レジデンスカード取得費用※4
・語学研修費用※5
・会計事務所への個人所得税申告サービス料
※1:会社全体で受診および労働許可書取得のための場合は非課税です。
※2:就業規則やその他社内規定されている場合の年間 1 往復分は非課税です。
駐在員の家族の分も含みます。
※3:赴任時の引越手当は非課税です。
※4:労働許可証(ワークパーミット)取得にかかる費用は非課税です。
※5:就業規則やその他社内規定にて規定されておりそれが業務に関連する場合は非課税です。
▼ベトナム国内から完全帰国する際
ベトナムでの何らかの労働契約などを終えて、みなさんの国に帰国する際には、出国日までに確定申告をする必要があります。駐在員の場合、帰任日から45日以内に確定申告を行うことを駐在先の会社などに委任することは可能になっています。これは外国人が外国でもらっている所得に対して行うものです。ベトナム法人から受け取っている所得や手当分に関する個人所得税に関しては、会社や事務所が源泉徴収をし、確定申告時期に拠点として個人所得税を確定申告します。
帰国する際、その暦年で非居住者の場合には確定申告が不要になることもありますので、念のためご自身の状況と照らし合わせて帰任前の確定申告が必要かどうかご確認ください。
当社では、今回のような、入国に関するサポートや、税務申告に関するサポートはもちろんのこと、その他ベトナム進出サポート及び拠点設立後の会計税務などのバックオフィス代行業務から、経営を体系化したメソッドをパッケージ化したローカライゼーションの支援サービスなども提供しています。進出を検討されている企業や、進出をしたばかりの企業、もしくはこれから会社の仕組化を図っていきたい企業など、本件に関してもう少し具体的な話を聞きたい場合には、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。