こんにちは。ホーチミン拠点の下田です。
2026年に入り、ベトナムの法人税制度に関して新たな動きが見られる。財務省によって公布された「通達20/2026/TT-BTC」は、これまでの制度を補足し、企業の税務実務をより明確にすることを目的とした重要なルールである。ベトナムでビジネスを展開する企業にとっては、単なる制度変更というよりも、「実務のやり方が具体的に定義された」という点で影響が大きいといえる。本稿では、この通達の位置づけとポイントを整理しながら、企業への影響を実務目線で解説する。
1. 既存ルールとの関係(政令320との違い)
今回の通達は、すでに公布されている政令320の内容を前提としている。
整理すると、政令320では制度の骨組みを定める、通達20ではその運用方法を具体化するという関係にある。これまで制度の解釈に曖昧な部分が残るケースも見られたが、通達によって判断基準が明確化されることで、税務対応のばらつきは一定程度抑制されることが期待される。
実務への影響①:損金算入と証憑要件の明確化
法人税の計算において重要となるのが、どの費用が損金として認められるかという点である。基本的な考え方自体に大きな変更はないが、今回の通達ではインボイスや関連証憑の整備が必要であること、一定金額以上の支払いについては非現金決済が求められること、費用の種類に応じて追加書類が必要となる場合があることがより明確になっている。
例えば、寄付金については所定様式による証明書、個人からの仕入については明細書の作成が求められる。
したがって、単に費用であるという事実だけでは不十分であり、適切に証明できるかどうかが損金算入の前提となる点が改めて明確化されたといえる。
実務への影響②:税務優遇措置の自己申告
法人税の優遇措置については、企業が自ら適用可否を判断し申告する方式が維持されている。通達20においても、優遇対象所得の判断、適用税率の決定、免税・減税期間の算定などを企業自身が行う必要があることが整理されている。事前承認は原則として不要であるが、その分、税務当局による事後的な確認が前提となる。したがって、企業としては適用根拠を合理的に説明できる状態を整備しておくことが重要である。
実務への影響③:収益認識ルールの明確化
今回の通達では、取引類型ごとの収益認識時期についても整理がなされている。
具体的には、所有権移転時の輸出取引、検収完了時の建設・据付、提供完了時のサービスといった基準が示されている。これにより一定の判断基準は明確化されたものの、実務においては契約条件や取引実態に応じた個別判断が引き続き必要である。
実務への影響④:税務申告・証憑管理の重要性
もう一つの重要なポイントは、税務管理の実務レベルでの明確化である。通達20では、税務申告に必要な資料の整備、税務当局からの要求に対する資料提出、取引内容を裏付けるデータの保存といった点が整理されているこれらは単なる形式的要件ではなく、証拠を提示できるかどうかが課税判断に影響するという意味で、極めて重要である。
4. 企業が今やるべきこと
今回の通達は、新たな制度を導入するものというよりも、実務ルールを明確化するものと位置づけられる。そのため、企業に求められる対応としては、自社の税務処理が通達に沿っているかの確認、費用計上および証憑管理の見直し、税務優遇措置の適用根拠の整理、収益認識ルールの確認などが挙げられる。
ベトナムにおいては、制度そのものよりも運用の理解不足によって税務リスクが生じるケースが少なくない。したがって、本通達はそのようなリスクを低減するための重要な指針であると評価できる。
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